ここではムービー撮影から編集までを経験に基づいてお伝えしましょう。
「台本」の重要性
実際の撮影までに出来る限り、詳細な台本を用意しましょう。クライアントや出演者などが専門家で、人前で話すことに慣れていて、その場で済んでしまう場合はなんとかなりますが、そのような方でも後々何度も落ち着いて見る可能性が有る映像では、厳しい仕上がりになることが多々あります。事前に落ち着いて推敲した台本がある方が、クオリティがあがるのはいうまでもありません。台本は作品の設計図です。現場にいるスタッフ全員が台本に沿って動きます。出演者、カメラマン、音声さん、照明さん、制作スタッフなど誰が見てもわかる丁寧な台本作りが大事になります。
カメラワークでの注意点 その1
次にカメラワークに関してですが、まず、1カメで撮った場合です。カメラを固定して撮影することをフィックスと言います。フィックスで撮っていると一部分をカットした場合つながりがカクっとなってしまいます。選択肢としてこのつなぎにディゾルブを使って滑らかにつなげるということもできます。ディゾルブというのはクロスフェードとも言います。途中でカットすることが予想される場合は、話している最中に寄ったり引いたりして、あらかじめサイズをいろいろと変えて撮ります。ただ、カットするかどうか分かりませんし、カットする場所も後で判断するので、カットしなかったとしてもおかしくないサイズ、スピードでズームしないといけません。
カメラワークでの注意点 その2
次は2台のカメラで撮影するケースです。この場合、1台を正面、もう1台をサイドから撮ってみます。この時、必ず2台のサイズは変えましょう。その方が自然に見えます。撮影によって考えていた内容と違う結果になることが多々あるので現場での判断がとても重要になります。出演者やカメラマンへの指示も重要です。取り直しという最悪の状況を避けるために常にいろいろと考え、想定しておくことが現場をスムーズに進行させることにつながります。
時間の表現
続いて「時間経過」の表現を考えてみたいと思います。映像の中で時間が経過したシーンを直結すると非常に違和感を覚えます。この違和感をなくすために、間に時間経過を表現したカットを挿入するのは大事だと思います。例えば放課後、公園で数人が話しているシーンがあったとします。次のカットが家の外観、夜の画です。これで次の舞台はこの家で夜になったということが認識できます。次のカットは食卓を囲んでいる、家族全員が映っている広い画にしましょう。そうすると、このシーンの場所と、出て来る人を説明できます。このように説明を丁寧に行うことで、見ている人にスムーズに伝えたい内容が伝わると思います。
編集準備
ビデオテープが主流だった以前までは、2台のビデオデッキを用いて、一方に再生専用のマスターテープを、もう一方に録画用のテープを入れ、コントローラーを用いて制御することで編集を行っていました。そのように操作が直線的(リニア)であることからテープを用いて行う編集は一般的にリニア編集と呼ばれています。やがて時代の流れと共に主流はノンリニア編集に移っています。ノンリニア編集は、撮影された記憶媒体に記録された動画をコンピューターに取り込んで行う編集のことを指し、映像の再生位置などを問わず、好きな部分を好きな長さで取り出して編集できることから、こう呼ばれます。現代の映像編集と呼ばれるものは、基本的にこのノンリニア編集のことと言ってよいでしょう。ノンリニア編集のメリットは、編集の自由度の高さにあります。すぐに元に戻す、やり直しを行えることや、ソフトウエアやプラグインを使用して多種多様なエフェクトを使えること、どれだけ編集を行ってもデータが劣化しないといった強みはリニア編集にはありません。ただし、効率良く作業を行うためには一定以上の性能がコンピューターに求められます。高解像度のデータやいくつものエフェクトを使用した場合には相応に処理も重くなるためコンピューターの性能が十分でなければ生産性はかなり落ちてしまうため注意が必要です
編集作業
スクリーンやモニターに映る映像にはいろんな動きがあります。画面を横切る、歩く、走る、じっと佇んでいる人でも髪がなびいていたり、瞼が閉じたりします。ただ、映像は良く分かることが優先事項ではなく、そこにリズム感、心地よさ、力強さがなくてはなりません。見ている人が見入ってしまうようなテンポ、心地よさというものが大事になります。これは編集作業の数をこなして身につけるものでもありますが、その人のセンスにも関わります。センスを磨くにはやはり多くの映像作品を見ることも必要です。
プロとアマの違い
映像作品を創る上で、プロとアマの違いはなんでしょか?それは創るプロセスにおいて、いかに己のなかに客観性を持てるかどうかではないでしょうか。アマは自分よがりで創ってしまいがちです。自分だけの世界を作って自分だけが面白ければ良い、と思うようなところがあります。だからといって、創ることに執着心を燃やし、無我夢中で創ることは悪いことではありません。ただ、そこに見る人の側になって創れるかがプロとアマの差が出てくるのではないでしょうか。これは難しいことだと容易に想像できます。それは創ることに夢中になっているプロセスにおいて第三者の目、観客の目、を己の中に持つことは至難の業だからです。だが、この客観性を持って創り上げることこそがプロの仕事ではないでしょうか。
テキスト:ナインフィールド
プロデューサー 松野 一人