ドキュメンタリーは、見る人に問題意識や喜び、悲しみ、怒り、驚きなど様々な感動を起こさせるものです。では、現場のリアルな感動を伝えるドキュメンタリーを制作するために、どのような努力をしているのでしょうか。
下調べが大切です
ドキュメンタリーは、作り手が強い感動や関心を持った人物、あるいは事柄をテーマにします。そして、そのテーマについてしっかり下調べをします。調べて得た知識を取り入れて、見る人に感動を伝える作品になるようテーマの世界観を膨らませます。例えば、相撲取りになりたくて新弟子検査を受ける少年を追うドキュメンタリーを作りたいとします。相撲取りを目指すのは珍しいことですから少年は関心の的にはなるでしょうが、それだけでは不十分です。その少年自身や家族のこと、相撲の知識、今日の相撲と相撲部屋の様子や課題、最近の新弟子の現状等々を調べることが必要です。ドキュメンタリーを制作する人達は、このように地道に膨大な下調べをしているのです。
心を開いてもらう
次に、撮影前の段階として、被写体となる人達の信頼を得ることは欠かせません。相手に受け入れてもらい、心を開いてもらう関係を築く努力は必須です。相手の信頼を得るためには、マナーを守ることや、初対面の相手にも話しやすいと安心してもらえることなど、基本的な人間力も必要になるのです。その上で、このテーマをドキュメンタリーで扱いたいという熱意を伝え、作り手としても信頼してもらう努力が必要です。
撮影は臨機応変に
撮影が始まると、現場ではその場で起きたことや場の雰囲気を、リアルタイムで瞬時に撮影しなくてはなりません。直感も含めて、臨機応変に対応できる力量が必要です。例えば、顔中砂まみれで痛みに耐えながら稽古する新弟子の顔をアップで追うのがいいのか、それとも引きで撮って大きな兄弟子達の中で子供が転がっているようにしか見えない様子を見せるのがいいのかなど、ディレクターとカメラマンの瞬時の判断と対応が物を言います。現場は常に一発勝負です。そして、一瞬一瞬を撮影した多くの映像の中から吟味を重ね、編集で感動を伝えるドキュメンタリーに仕上げていくのです。
ドキュメンタリー制作の醍醐味
何が起きるかわからないリアリティに取り組むドキュメンタリー制作には独特の緊張感がつきものです。そして、それがドキュメンタリー制作の醍醐味とも言えるのです。
テキスト:ナインフィールド
プロデューサー 松野 一人