近年、アニメーション動画を利用する企業が増えています。YouTubeやWeb広告をはじめ、企業PRや商品・サービス紹介など、様々なところで活躍の場を拡げています。実写と違って、ロケの必要がほぼありませんし、スキル次第で、商品の魅力や数値などの情報をわかりやすく伝えられます。「商品やサービスの魅力をもっと伝えたい」「動画で業務を効率化したい」といった動機で、動画制作を検討している企業も多いのではないでしょうか。
サービスが無形の場合、イメージが湧きづらく、成果に結びつきにくいこともありますが、
アニメーション動画なら、機能性やメリットなど、ユーザーにとって理解しづらい点を視覚的に訴求し、イメージと現実のギャップが埋められます。今回はアニメーション動画を導入するメリットを探っていきます。
わかりやすさが身上
そもそもアニメーション動画とは、イラストやグラフィックのみで構成された動画のことです。撮影した実写素材を元に構成された動画は「実写動画」と呼び、アニメーション動画とは区別されます。
アニメーション動画のメリットは、とにかく分かりやすいことです。商品の魅力を伝えることはもちろん、数値などの情報もわかりやすく伝えられます。1分間の動画は、Webサイトおよそ3,600ページ分の情報量に匹敵すると言われています。企業の伝えたい情報をテキストで紹介するとなると、ユーザーが読み進める労力は大きく、時間もかかり、負担この上ありません。商品やサービスの機能が複雑な場合はなおさらでしょう。アニメーション動画は、画像やテキストのみのページと比較して、よりわかりやすく、リーズナブルに作ることが可能です。
加えて、キャラクターが使用できるので、親しみやすく、商品・サービスや企業ブランドへの親近感に繋がります。アニメが持つエンタテインメント性で、見てもらえる確率が高まり、「この商品・サービスを利用したら、こんなメリットがあるのか!」と直感的にわかりやすくなります。ユーザーは興味を持って情報に接することができるでしょう。
商品・サービスを「利用する前」、「利用中」、「利用後」と時間軸的にわかりやすく表現できる点も、メリットの一つです。例えば、薬事法など表現に規制の多い化粧品や健康食品なら、商品の使用感や使用後のイメージを「演出」や「ストーリー」で表現できます。コメントだけではわかりづらい説明もアニメなら一目瞭然ですし、複雑になりがちな専門性の高いサービスやシステムでも、アニメーションや比喩表現を利用すれば、ビジュアル的な分かりやすさは格段に向上します。さらに数字データなども盛り込めますので、客観的に信頼感が生まれ、必然的にユーザーの納得度は高まり、購買行動を起こしてもらいやすくなるでしょう。
幅広い表現を低予算で実現
「実写」では、特撮や高価なCGを使わなければ表現できないことが、アニメであれば、格安でできるというケースは枚挙に暇がありません。実際の人物を撮影する「実写」には、モデルやエキストラなどのキャスティングが必要ですが、イメージに合う人材を探すとなるとコストも時間もかかります。
アニメーション動画ならば、こうした手間は不要ですから、作業量は飛躍的に軽く済みます。実写だと具体的になり過ぎて、かえって不快感を与えてしまうような手術シーンなども、アニメーションにすることでマイルドになり、ユーザーも見やすくなります。もちろん、イメージにあったキャラクターの作成も自在なので、キャスティング後に「イメージと違った」というミスマッチもかなり軽減されるでしょう。
映像の修正や変更が比較的しやすいことも有力なアドバンテージです。実写の場合、編集で変更できる点は限られてしまいますが、アニメーション動画ならば、実写動画と比べて、修正や変更が利きやすいというメリットがあります。特に、定期的に機能が追加・変更されるサービスの場合、動画内容を変更することができるので、アニメーション動画の利点が存分に活かせるといえます。
また、アニメーション動画は撮影の必要がないので、撮影機材の準備や手間を省けます。キャラクターというと、「非常に手間がかかる」印象やテレビアニメなどのイメージがありますが、2Dのキャラクターアニメーション動画の場合は、予め用意されたテンプレートなどを用いて紙人形のような形で制作し、それを自在に動かすスタイルもあります。これは、リモートワークや在宅勤務が多くなってきた最近の働き方に沿った制作手法にもマッチしています。
実写とのハイブリッドも…
3DCGアニメーションならば、2Dよりも詳細な設定が可能です。具体的には、映像越しに実体を把握できるため、カメラや掃除機といった商品紹介には最適ですし、リッチな印象を持たせることで、商品やサービスを、臨場感豊かになおかつ様々な角度から消費者へ訴求できます。
アニメーション動画のデメリット
「いいことづくめ」のように見えるアニメーション動画ですが、デメリットもあります。はじめのリスクは抽象的になる可能性です。
殆どのアニメーション動画にロケが不要なことは先述しましたが、換言すれば、実際の人やモノを起用することがほとんどないということになります。このため、ともすれば、抽象的な印象になりがちで、コンセプトを精密に組み立てる必要がある他、演出面でも工夫が必要です。例えば企業がクライアントだった場合、実際の製品や部品などが静止画で表示され、そこに簡単なアニメーションが加えられただけならば、訴求力の低下は免れません。
コストが膨れ上がるリスクもあります。最新技術をふんだんに使ったアニメーション動画を作成したら、想像以上に時間と手間がかかってしまい、見積もり以上のコストが発生してしまうリスクもあります。
表現の自由度が高いことも、ともすれば「諸刃の剣」になりかねません。表現が自由過ぎるあまり、意味のないこだわりに捉われてしまったり、斬新な演出ばかりに目が行ってしまったりといったケースもあり得ます。クライアント不在の作品では、肝心の商品やサービスへの訴求が不十分になることは論を俟ちません。これはアニメーション動画に限りませんが、こうしたコストや訴求力の低下に配慮しながら、動画作成を進めていく点が重要です。
アニメーション制作にも企画力・演出力は必要
場合によってはコスト管理や抽象化による訴求力の低下といった弱点があるものの、それらをきちんと管理すれば、アニメーション動画は極めて有効な訴求手段になります。実際に国の内外で多くの企業が成果を上げており、企業間の取引であっても、多くの用途に利用できます。参入に対する敷居の低さも導入には追い風といえるでしょう。
ただ、アニメーション動画を導入すれば、必ず効果がでるというわけではありません。重要なのは、企業の事業計画にリンクした戦略として動画制作です。どんな課題が解決でき、そのためのコストはいくらで、いつから制作すれば間に合うのか。こうしたノウハウは、実績のあるプロと相談して作っていくことが制作成功への近道といえそうです。
テキスト:ナインフィールド
プロデューサー 笹木 尚人