皆さんはタイムラプス撮影というのを耳にしたことがありますか?植物の成長や、空の移り変わりなど「定点」で長時間撮影したものを早送りで再生するもので、最近、使われる機会がとみに増えています。例えば、バラエティ番組ならドッキリの楽屋、リフォーム番組の「ビフォーアフター」ドラマやドキュメンタリーなら、「空と街の時間経過」など、その活躍は多岐にわたっています。近年はYouTubeなど動画投稿サイトへアップされる例も増えていて、ダンス、料理、車窓風景、お絵かきなど枚挙に暇がありません。以前は専門的な道具がなければ撮影は困難でしたが、現在は一般の人でも、非常に気軽に撮影できるようになりました。スマホでも簡単に撮影できるので、旅先などで面白い映像が撮れる可能性もあります。今回はこのタイムラプス(定点)撮影について、探っていきます。
タイムラプスが活かされる撮影ジャンル
タイムラプスはゆっくりと動いているものを撮影することで、その特徴が最大限、活かされます。インパクトの強い動画を撮影したければ、天候の変化を撮影するのがおすすめです。ゆったりと動いている雲や、昇る朝日、沈む夕陽のシーンなどはタイムラプスの真骨頂とするところで、特に高い山では、「風が強く雲の動きが早い」といったバラエティに富んだ動画の撮影が期待できます。また、街中での撮影では、「天候の変化」に加えて「人や乗り物の動き」が撮影できるので、人々の動きと情景がどんどんと変化していく様子を表現できます。スクランブル交差点のタイムラプスは代表例です。
「天候の変化」とほとんど同じですが、満天の星空を撮影するのも、タイムラプスならではといえるでしょう。タイムラプス撮影をすると、ゆっくりと動いていく無数の星を捉えられるので、ときどき、流れ星が「キラッ」と流れる様子でも撮影できれば、ロマンチックな作品に仕上がることは間違いありません。昼間に比べて星空の撮影は、露出等、技術が必要ですが、このハードルがクリアできれば、見ている人に多くの感動を与える映像が期待できます。
空の撮影だけでなく、アート作品を制作する風景の撮影もタイムラプスを使うと効果的です。絵画やイラストなどは、制作に非常に時間がかかりますが、そんな作品の制作風景をタイムラプスで撮影すると、作品がどのような工程を経て、作られていくかが視覚的に、しかも圧倒的な短時間で理解できます。当然、目で楽しむだけではなく、知的好奇心も刺激されるので、視聴者は動画にくぎ付けになります。これは、アート作品に限らず、建築現場などにも応用が可能なので、タイムラプス撮影の活躍が大いに期待できると言えるでしょう。
さらに、近年はタイムラプスの一種である「ハイパーラプス」も一般的になってきています。「ハイパーラプス」は、カメラを移動させながら行うタイムラプス撮影で、定点視点が通常のタイムラプスに対し、視覚が変化することで、動きを持たせることが可能です。
「タイムラプス撮影」の方法と注意点
タイムラプス撮影には、様々な方法があります。この内、静止画撮影で代表的なのは、「微速度撮影」です。これは、同じ地点で、数秒のインターバルを空けて撮影した「写真」を、連続でつなぎ合わせる手法です。短いもので「1日単位」、長いものだと「数年単位」で、じっくり時間をかけて撮影した動きを、短い時間に圧縮できるのが特徴で、時の流れが体感でき、肉眼では体験できない感動が得られます。ただし、この方法は、一眼レフカメラなどで撮影し、編集ソフトで写真を動画につなぎ合わせる必要があり、非常に手間がかかります。もちろん、ビデオカメラを使って、動画で撮影する方法もありますが、防犯用のカメラとHDDを組み合わせるケースを除けば、多くの市販のカメラの場合、メモリーの都合上、最長でも数時間しか撮影できません。
ハイパーラプスは別として、多くのタイムラプス撮影の場合、基本的には撮影できる画角を動かしません。このため、狭すぎると被写体が画面に入っていなかったり、広すぎると見せたいものが小さくなってしまったりします。つまり、撮影の始まりから終わりまで、決めた画角内で完結することが求められるので、いったん撮影を始めると、サイズ変更はもちろん、ホワイトバランスやフォーカスの調整はご法度です。ですから、撮影前のプランニングはとても重要です。さらに言えば、長時間撮影の場合はバッテリーやメモリー容量など撮影前の準備も怠りなくする必要があります。そして意外に軽視しがちなのが、三脚。長時間撮影になるので必須です。自然条件も考えれば、なるべく頑丈な方がいいでしょう。
機能の進化で変わる機材環境
最近は、カメラ機能の進化で、タイムラプス動画の撮影はかなりハードルが下がりました。従来であれば、一眼レフや編集ソフトを使う必要がありましたが、最近のモデルの場合は、カメラ本体にタイムラプス撮影機能がついたものが多いですし、タイムラプ機能がついていないカメラであれば、一定時間ごとにシャッター切る機能を備えた「レリーズ」を用意すれば、不自由はありません。近年は定点観測に特化したカメラも販売されています。定点観測カメラは防水性に優れているため、天候を気にする必要がなく、通常のカメラよりも長時間の撮影が可能です。そのため、他の撮影機材に比べて、表現が豊かになり、時間の加速感などをより強く主張した映像も制作できます。さらに最近では、スマホでも専用のアプリを使えば、簡単に撮影できるようになってきています。
タイムラプス撮影の作品を際立たせる「裏技」
論を俟たない話ですが、タイムラプス撮影はいわゆる「同ポジ」(同所ポジション)なので、色あい大胆に加工した方が、表現したい世界観や神秘的な印象を強調することができます。特に風景の場合、通常の動画より色が際立っているケースが多いです。それとタイムラプスは基本的に無音ですので、BGM如何で動画の印象が大きく変わってしまいます。通常ならば、BGMは元の音声を邪魔しないボリュームを心掛ける必要がありますが、タイムラプスでは主役にした方がむしろ効果的です。例えば、アップテンポの音楽なら、動画のスピード感や変化の大きさが表現できますし、経年変化をタイムラプス風に仕上げた動画なら、イントロとテーマでテンポが違う曲を流したりすることで、スピード感を演出できます。その意味では、より「選曲」のセンスが問われるかもしれません。
未経験でも撮影は可能だが…
先述の通り、確かにタイムラプス撮影のハードルは年々、下がっています。しかし、センスのある映像、電子商取引の誘客につながるような「効果的な映像」ということであれば、プロに分があります。「一日の長」ならぬ「十日の長」があるといって差し支えないでしょう。また、機材や編集ソフトを一から揃える必要もなく、それどころか、作品を仕上げるにあたって、豊富な経験に基づいた様々な提言やアドバイスも期待できます。ご自身でタイムラプス撮影の技術を身につけたい方は別ですが、企業や組織でタイムラプス動画の導入を検討する場合、ぜひ、プロへの依頼を選択肢に加えてみては如何でしょうか。
テキスト:ナインフィールド
プロデューサー 松野 一人