映像業界にあこがれる人にとって、テレビ番組の制作に関わることは、やはり1つのステイタスでしょう。最先端の映像技術を駆使して番組を作り、それが全国に放映されることを考えると、映像制作者にとってこれほど魅力的な仕事は他にはありません。
ではテレビ制作の現場では、一体どのような仕事が待っているのでしょうか。生放送番組と収録番組とを比較しながら、実際のテレビマンの業務を覗いてみましょう。
まずはテレビマンになることが第一歩
1本のテレビ番組を作り上げるまでには、一般の人の想像をはるかに超えた数の人々が同じ職場で業務に携わっています。プロデューサー・ディレクター・カメラマンなど、その職種を数え上げればキリがないでしょう。
テレビ番組の制作に関わりたいなら、まずはテレビ局に直接就職するか、番組制作を委託される映像制作会社に就職することが第一歩です。
映像業界は比較的門戸が広く、学歴や経歴にこだわらずに、未経験から募集している会社も少なくありません。またクリエイティブな仕事として人気がありますが、常に新しい人材を求めているため求人案件も安定しています。
この世界に未経験から入り1から学ぶことも可能であり、業種が違っても企画・制作・営業などの経験があれば、即戦力として現場で活躍することも可能です。
最初にどのような形で番組制作に関わるかは別にして、テレビマンとして仕事を始めることは、決して難しいことではありません。
テレビ局で放送に携わる場合
テレビ番組を制作して放送する、これら一連の流れすべてをテレビ局がこなしているわけではありません。テレビ局の仕事の中心は、視聴者に対して確実に番組を送り届けることです。それ以外のさまざまな業務には、外部企業も大きく関わっています。
さて、誰が作るかは別にして、いったいテレビ局とはどのような仕事をしているのでしょうか?まずはテレビ局に入社して、テレビマンとして活躍するパターンから考えてみましょう。テレビ局で行われる主な業務は以下の通りです。
①編成業務
テレビは毎日決められたスケジュール通りに放送されていますが、このスケジュールを編成したり、番組内容の企画などを行います。
②制作業務
報道番組やドラマ、バラエティー番組など、名前の通り直接番組制作に関わる業務です。
③営業業務
広告代理店などと協力しながら、スポンサーになる企業を探して契約する業務です。
④コンテンツ業務
自社で制作した番組をコンテンツ化して海外に販売したり、逆に海外からコンテンツを購入して放送したりする業務です。
⑤その他の業務
テレビ局も企業体として活動しているので、総務・人事・経理など一般企業と同様の部署も存在します。また高度な放送用機器を扱うため、技術系の業務を担当する部署もあります。
実際に番組制作に関わりたいなら、制作業務を志望する必要があるでしょう。ただし採用されたからと言って、自分が希望する部署に配属されるとは限りませんが。
番組制作会社で現場に携わる場合
できる限り番組制作そのものにタッチしたいなら、テレビ局よりも番組制作会社(映像制作会社)に入った方が良いかもしれません。
そこで今度は番組制作会社に入社し、テレビマンとして活躍するパターンを考えてみましょう。
番組制作会社には独立したプロダクションと、テレビ局と資本提携関係にある企業との2種類があります。すべての番組制作会社が、テレビ局の下請けをしているわけではありません。
具体的な業務はやはり制作に関わる内容が多く、企画から始まり、編集・撮影・音響・CG制作など多岐にわたる仕事を日々こなしています。また派遣スタッフとして、直接テレビ局内で番組制作を担当するケースも多くあります。
いずれにせよ番組制作会社に入れば、スタジオでの生放送と収録番組制作や、外に出てのロケ番組など、さまざまな制作業務に関わることができるでしょう。これらの業務はテレビ局内よりも、番組制作会社に依頼がくることがかなり多いからです。
もしも過去に映像制作会社で、プロデューサーやディレクターの経歴があれば、テレビ局内で直接ディレクターなどの仕事に就ける可能性もあります。
実際にテレビ局内で番組を作っているディレクターは、番組制作会社からの派遣社員や、フリーランスの場合が多いのです。
しかし未経験から制作スタッフに入った場合は、ほとんどがAD(アシスタント・ディレクター)からのスタートになるでしょう。
簡単に言えば制作現場での「何でも屋」さんです。とにかく色々な仕事をこなしながら、現場での作業の流れを身をもって体験するわけです。
そこから経験を積んだ上で、それぞれが適したポジションでさらに技術を磨くことになります。現場で活躍できるかどうかは、本人の努力次第ということになります。
生放送はどのような現場なのか?
生放送にはニュースや情報バラエティー、スポーツ中継などがありますが、ほとんどの場合しっかりと台本があり進行も決まっています。
しかし進行中の時間配分も秒単位で管理されていて、トラブルが発生する危険性もゼロではないので、制作スタッフにとっては非常に緊張する現場です。
やはり生放送の緊張感は、現在のリアルタイムな情報が、そのまま視聴者の元に届くという怖さにあります。生放送ではタイムキーパーが必ず時間管理をしており、進行のズレを常にチェックしながら修正しています。当然極めて高い集中力が要求されます。
そして出演者をはじめ、ディレクターやカメラマンも、万が一失敗した時にはやり直しがきかないため、本番中は集中力と緊張感とがピークに達するまで張りつめています。
それをコントロールしながら、1つの番組を無事に終わらせなければなりません。
ここで必要なのは放送中に、高い集中力を保ち続ける能力と、トラブルが発生した時に即座に対応できる瞬発力です。誰も予期せぬことが起こるのも生放送の宿命なので、これら2つの能力が揃っていないと、生放送制作で活躍することは難しいでしょう。
つくりにこだわるなら収録番組
一方「完パケ」とも呼ばれる収録番組は、1つの番組を作り上げるまでのステップが重視されます。この場合生放送とは違って、ありがたいことに、テレビ放送中に緊張感でいっぱいになる人はいません。
その代わり番組の制作段階では細かい段取りが重要で、企画~打ち合わせ~撮影~編集と、順番にステップを踏みながらレベルの高い番組を作り上げなければなりません。
生放送には一発勝負という怖さがありますが、収録番組ではやり直しができることが、逆にスタッフにとっては重圧になるのです。つまり「オーケー」が出るまでは、何度でも繰り返し同じ作業を続けなければならないのです。
これはスタジオ収録でもロケでの収録でも同じことで、番組制作に必要なものがすべて揃わないと、1本の番組は完成しません。
そのため収録番組制作では、いわばスポーツでの持久力にあたる忍耐力や、いかにこだわりを持って番組作りに打ち込めるかという、長期的視点での能力が要求されるのです。
収録番組制作に向いているのは、こだわりを持って粘り強く物事を成し遂げるタイプの人だとも言えるでしょう。ただし制作の各段階では、やはり高い集中力が必要になることも忘れてはいけません。
とにかくチャレンジ!
生放送でも収録番組でも、1つの番組を作り上げるために、極めて多くのスタッフが、それぞれ自分に与えられた仕事をこなしています。
新人の時は緊張感に押しつぶされそうになっても、人間とは不思議な生き物で、慣れるに従って今まで特別だった仕事が普通になってきます。
テレビで放送される番組では、生放送か収録番組かは別にして、さまざまな人々が自分の能力をフルに発揮して自己主張しています。確かに一般職よりも実力に左右される業界ではありますが、テレビマンとして活躍したいなら、思い切ってチャレンジしてみませんか?
テキスト:ナインフィールド
ディレクター 高橋 孝太