日本で、世界で起こっている事を家庭に伝えるニュース番組。
日々の暮らしに不可欠なマ スメディアとして不動の地位を持っていると思われてきたテレビニュースですが、近年その在り方に疑問を持つ声が、インターネットを中心に叫ばれています。
”1億総メディア時代“と言われる今、テレビの報道番組だからこそ出来ること、
その特徴などを、改めて見つめ直す時が来ているのかもしれません。
テレビとインターネットの立場が逆転
総務省が公開している「情報通信白書」によると、2000年以降全世帯でのテレビ視聴時間 は減少を続けていて、逆にインターネットの利用時間は大幅に増加しています。
この傾向は特に若い世代に顕著です。
60代以降になるとインターネットになじみがないため、依然として長時間テレビを視聴す る習慣がありますが、
20代ではすでに2010年代前半に、テレビとインターネットの利用比 率は逆転していました。
現在全世代を総合しても、2019年の段階でインターネットがテレビを追い越したと言われ ています。
全国民の70%がスマートフォンを持っていることから考えても、この結果は当 然なのかもしれません。
では今の社会で人々は、毎日起こるできごとをどんな形のニュースで受け取っているのでしょうか。
実際多くの人はインターネットを通じて、GoogleやYahooなどのポータルサイ トを使い、
複数のメディアが発信するニュースを選んで情報を得ているようです。
現代人の特性としてここが重要なところですが、ほとんどの人は興味があるニュースだけ 拾い読みして、
興味のないニュースには見向きもしないと考えられます。忙しい日本人 は、特定のサイトに長時間滞留することも好みません。
また動画による情報はYouTubeなどから続々と配信されているため、やはり自分が興味のある情報だけを見つけるパターンになります。
テレビのニュースのように、広い分野をカ バーする報道とは、目的も形式も異なっているのです。
地上波で放送される報道番組の誇りと責任
そもそものテレビ番組の仕組みの話になりますが、NHKを除く民法のテレビ番組は、スポ ンサーから出資される広告料で制作されています。
放送を行う局だけではなく、多数の出 資企業の名前を背負って放送を行うにあたって、
誤った情報や憶測でしかない内容を大々 的に扱うことは出来ません。
後から簡単に「間違っていました」では済まないのです。
また、先ほど述べたようにインターネットで情報を得る手段や習慣が無い人々にも情報を 届けるという役割を持っているのですから、
様々な情報を偏りなく、正確に、そして可能 な限り迅速に届けることが非常に重要です。
テレビ番組で報道を行う人々は、1人1人がそうした責任感を持って番組制作に臨んでいるのです。
どちらが優れているかではなく 共に歩む時代へ
ここまでテレビ番組の報道の特徴や利点を述べてきましたが、決してインターネットメディアよりもテレビの方が優れている、ということを言いたいのではありません。 正確性や幅広いニュースを扱うという点ではテレビの方が優れているとも言えますが、そ の中から興味のある内容を重点的に調べることや、迅速な一次情報を得るという点ではインターネットの方が優れている場合もあるのです。
大切なのは「どちらが優れている」「こちらは不要だ」と断じてしまわずに、それぞれの 良いところを上手に使ってニュースを知る、ということです。
若者のテレビ離れが叫ばれ、インターネット普及率が高まっている昨今ではありますが、 2019年にNHKが行ったアンケートによると、働き盛りと言われる30代~40代の人々は情 報収集に使うメディアはテレビとネットが半々程度という結果となっています。
今まさに現代日本の中核を担う世代が双方のメディアを上手に使い分けることが出来るよ うになれば、その先の若い世代の人々にも情報収集の手段としてテレビとネットを使い分 けるという文化が根付くことになるかもしれません。
テレビの報道番組が目指すべき未来
メディアがテレビ一強と呼ばれた時代は過去のものとなり多様なメディアが生まれる現代において、我々テレビマンには課題が多いと言えるでしょう。
報道というくくりにおいても、”1億総メディア時代“となった今、その取材姿勢や方法が問 題になることも現実としてあることです。
いまだ大きいテレビが持つ影響力を自覚しながら、今まで以上に正確に、そして真摯に番 組作りに取り組む姿勢が求められています。
もちろん若者へのアピールも忘れてはいけません。先ほど触れたNHKのアンケートにおいては、10代の若者が情報手段として使用しているメディアについて、
インターネットという回答が88%、テレビは41%と、2倍以上の数値が出てしまっているのです。
テレビの報道番組がどれだけ正確で幅広い情報を扱っていたとしても、それが届いていな いのであれば意味を成すことができません。
2020年5月現在、若者も学校や仕事に行くことができず、家でテレビを見る機会が増えている状況です。
もちろん喜ばしいとは言えない状況ではありますが、今こそテレビという 媒体を若者に再認識して貰う時なのかもしれません。
今後の10年、20年先のテレビの未来 は、今この時にかかっているのではないでしょうか。
少なくとも報道という点において、インターネットとテレビは敵対関係にあるわけではあ りません。
それぞれの利点を上手く見出しながら、視聴する側だけではなく、制作する側 の我々も、新たな時代のメディアの在り方を考えてゆくべきなのでしょう。
テキスト:ナインフィールド
プロデューサー 松野 一人