もともと英語の「promotion」とは、主に販売促進に関わる意味で使われていましたが、日本でも「プロモーション」として定着すると、モノの魅力をアピールすることという意味でも使われ始めました。忙しい現代社会では、いたる所でプロモーションが行われていますが、近年映像によるプロモーション活動が拡大しています。映像を使うと短時間で相手にメッセージを伝えられるからです。映像制作者としてはぜひ手掛けてみたい、このプロモーション映像について、ここから制作のポイントや注意点を一緒に考えてみましょう。
そもそもプロモーション映像とは?
少し前の話になりますが、企業やその製品を紹介する時に、「PRビデオ」と呼ばれる映像素材を使っていた時期がありました。今となっては色あせた感じが否めませんが、ほとんどは企業や製品について、映像とナレーションを使って丁寧に説明するものでした。
しかし現在広がっているプロモーション映像は、こうした「説明ビデオ」とは一線を画すものです。現代人は多くの情報に囲まれているため、Webサイトの検索にしても忍耐強く1つのサイトに集中することがありません。
今必要とされるプロモーション映像とは、瞬間的に視る相手の興味を引き付けて、映像の中に引きずり込み、イメージとして相手の心に刻み込まれるもの。その意味からすると、以前よりも企画や構成が難しくなっているかもしれません。
今では全然珍しくないですが、やはり少し前にはミュージシャンが新曲を発表する時に、斬新な「PRビデオ」を盛んに作っていた時期がありました。映像と音楽との融合によって、視る相手に強烈なイメージを植え付ける、こうした音楽用PRビデオが、もしかすると現代のプロモーション映像へとつながっている可能性もあります。
まずはしっかりした企画からスタート
現代のプロモーション映像は映像コンテンツという位置づけで、かなりの部分がインターネット上で公開されています。テレビなど他のメディアと比較して、インターネットでは各サイトへの滞留時間が非常に短いという特徴があります。
そこで視聴者が瞬間的に興味を抱く映像センスが求められるわけですが、では手の込んだ特殊効果や、CGをあちことに散りばめた映像が好まれるのでしょうか?
映像の世界で必ずしも最新技術がヒットするわけではないことは、同じ映像業界のハリウッド映画を参考にするとよく分かります。3Dも含めて今ではほとんどの映画に特殊効果が使われていて、私たちは現実世界では不可能な体験を映画の中に視ることができます。
しかし以前に比べてハリウッド映画が低迷していることは、もはや周知の事実です。逆に特殊技術を使わない映画への回帰が叫ばれているという、実に皮肉な現象も生まれています。
プロモーション映像についても同様で、本当に見る側を引き付けるのは、企画と構成がしっかりとした作品であり、奇をてらった特殊な映像ではありません。プロモーション映像の作成に関しては、まずは優れた企画が求められると言っても良いでしょう。
大学の魅力を伝えるプロモーション映像
少し前まではパンフレットやWebサイトの充実が、大学や専門学校が生徒に魅力をアピールする一般的な方法でした。しかし現在こうした教育機関も、次々に動画によるプロモーション映像を活用し始めています。
特に生徒数が減少している中で、私立大学や専門学校では自校を上手にアピールすることが死活問題。若い世代に訴えかけるメディアとして、プロモーション映像が注目されるのは当然の結果でしょう。
大学のプロモーション映像では、現在主に以下のような動画が制作されて、サイトなどで配信されています。
・大学のイメージ映像
・キャンパス案内や授業風景など校内の雰囲気を伝える映像
・選択可能な学科についての説明映像(教授や講師の紹介)
・在校生に対するインタビューや学校生活の紹介
・卒業生に対するインタビューや就職状況の紹介
これらの映像はパンフレットなどと比較すると、大学の雰囲気を新鮮でリアルな状態で伝えることが可能です。受験生に大学の魅力を知ってもらうには、実際にその場にいるような映像体験が非常に効果的です。
そこで大学向けのプロモーション映像を制作するにあたって、まず何を考えて企画に盛り込めばよいのか、いくつかポイントを挙げてみましょう。
・受験生は大学に何を求めているのか?
・受験生にとっての大学の魅力は何なのか?
・受験生は志望校のどのような特徴を知りたいのか?
・最終的に受験生は何を基準に志望校を選ぶのか?
・大学がアピールしたいポイントは何か?
・大学はどのような学生を求めているのか?
・大学はプロモーション映像を使って何をしたいのか?
大学のプロモーション映像を制作する場合は、こうしたポイントを精査して企画を立てなければなりません。受験生側と大学側と、どちらか一方の立場だけで考えても、魅力的な映像は作れないということです。
営業の武器になる企業のプロモーション映像
一般企業にとっても、業務に映像を活用する機会はますます増えています。企業のプロモーション映像は、主に自社のサービスを外部に対して発信するものです。その方法は多様化していますが、需要の多いものをいくつか確認しておきましょう。
①企業プロモーション
取引先や一般顧客に対して自社の概要を紹介する映像で、以前はプロモーション映像としては最も一般的でした。
②商品・サービス紹介プロモーション
営業ツールとして使える映像全般で、広義ではテレビのCMも含まれます。現在はWebサイト上で無数に配信されており、プロモーション映像の中でも最も需要が多いと思われます。
③プレゼンテーション用映像
取引先などに新たな企画を提案する手段として、映像によるプレゼンテーションも一般化しています。やはりイメージとして相手に魅力を伝えられるため、今後はさらに需要が高まる分野かもしれません。
④取り扱い説明書の映像化
商品紹介映像の1つとも考えられますが、実際に商品を購入した顧客用に特化したプロモーション映像です。DVDとして商品に添付したり、企業のWebサイト内で提供したりとパターンも多様です。
⑤求人用プロモーション
企業にとっては人材の確保が難しくなっている中で、自社の魅力を求職者にダイレクトに届けられるのが、プロモーション映像を使った求人です。大学用プロモーション映像と同様に、若い層への訴求力が非常に高いため、今後さらに広がりを見せるでしょう。
企業の宣伝メディアがテレビからインターネットにシフトする中で、プロモーション映像の種類も飛躍的に増え、より手軽に使える映像の需要は、今後一段と増加すると予測されます。経済活動の中心でもある企業にとって、映像を使った営業や販路拡大は今や必需品。ここで紹介したプロモーション映像以外にも、映像制作業界としては企業をいかに顧客として取り込めるかが、重要な経営ポイントになるはずです。映像制作者としては、企業向けプロモーション映像に精通しておくことが、仕事の幅を広げることに直結すると考えておくべきでしょう。
映像制作は技術力プラス企画力
プロモーション映像の活用メディアは、かなりの部分をインターネットが占めています。そのためごく短時間で視聴者の興味を引けないと、商業映像としての価値は大きく下がってしまいます。
とは言っても演出や効果のみに頼った映像では、瞬間的には視聴者を引き付けるかもしれませんが、中身がなければすぐに離れられてしまいます。そうした意味ではプロモーション映像制作は、以前よりも難しくなっているのかもしれません。
そこで考えるべきなのは、映像制作に入る前にしっかりとした企画を立案すろることです。これからのプロモーション映像では、クライアントの希望に沿いながら、視聴者側が求めるものを詳細に調査した上で企画を立てる必要があります。
美しい映像、優れた撮影技術、ハイレベルな特殊効果など、映像の価値を高める技術はいろいろありますが、技術だけに頼っても良い映像は作れません。これからのプロモーション映像にこそ、優れた企画力が必要になるのではないでしょうか。
テキスト:ナインフィールド
プロデューサー 高瀬 慎一