最近、動画マーケティングの中でも視聴者に適したコンテンツを配信できる「インタラクティブ動画」が注目を集めています。従来の動画は、配信側が一方的に動画を流し、視聴者は受け身として視聴することが多いですが、「インタラクティブ動画」は動画内でクリックやタップなどのアクションを起こすことができ、能動的な視聴が可能です。企業側はこれまで以上に視聴者目線で動画制作に臨む必要があります。今回はインタラクティブ動画の可能性と導入する際に気をつけたいポイントについて、掘り下げていきます。
インタラクティブ動画とは…
去年、5Gがスタートし、大容量動画がストレスフリーで視聴できるようになったことで、SNSはもちろん、レシピ動画やHow to動画、さらには有料動画サービスなど、人々が動画に接する機会は飛躍的に増えています。
さらに若者世代では、スマホで動画コンテンツを見る人が8割にまでのぼっているというデータも出ていて、スマホでの動画視聴は最早、全世界で日常化しています。
快適な動画の視聴環境が整い、スマホでの動画視聴が一般化したいま、各社が動画マーケティングに力を注ぐのは必然といえます。ただ、これまでの動画ではどうしても発信側の「一方通行」に陥ってしまいがちです。そこで、視聴者と双方向のコミュニケーションが取れる手法として、注目を集めているのが「インタラクティブ動画」です。
「インタラクティブ動画」とは、「視聴者が触れたり、体験したりできる仕掛けを組み込んだ動画」のことです。「見るだけ」で終わっていた動画の中に「仕掛け」を作ることで、従来にはなかった動画マーケティングが実現可能になります。具体的には「動画の中で紹介されている商品をクリックすると、商品の詳細や購入ページが表示される」「動画の途中で選択肢が示され、視聴者の選択によって異なる商品ストーリーが展開される」「動画内に目次が表示され、クリックした項目までショートカットでジャンプできる」といった演出が考えられます。つまり視聴者の選択や操作によって、その視聴者により適したコンテンツの提供が可能になります。
例えばYouTubeの動画を見る前、もしくは見ている最中に、見ている動画と関係のないCMが流れますが、CMの動画には外部サイトへのリンクが仕掛けられていて、クリックすると、外部サイトへと誘導されます。これも「インタラクティブ動画」の一つです。
既に、海外では数多くの企業が「インタラクティブ動画」の活用を始めています。日本でも「動画コマース」への応用をはじめ、「対面チャネルのDX(デジタルトランスフォーメーション)化」さらにはインターン、オフィス見学の疑似体験といった「採用のデジタル化」などを目的に、大手企業を中心として、様々な業界が導入に意欲的です。
インタラクティブ動画の魅力
「インタラクティブ動画」の最大のメリットは、エンゲージメントを高められることです。エンゲージメントとは、「企業」や「ブランド」、「商品」とユーザーとのつながりの強さを表す指標のことで、ユーザーとの対話や双方向のコミュニケーションが、エンゲージメントを高める重要な要素になっています。「インタラクティブ動画」の場合、視聴者が触れるポイントを適切なタイミングで用意すれば、視聴からの離脱が抑えられるので、視聴時間が通常よりも長くなる傾向にあります。視聴時間の向上は当然、商品やサービス、さらにはブランドの深い理解に繋がり、動画の中でサービスをうまく紹介できれば、エンゲージメントはかなり高まります。
「インタラクティブ動画」は、動画内のタグを見て「触りたい」と思わせ、視聴者を「受動的」から「能動的」へと変化させることができます。最近の若者はスマートフォンで「ながら視聴」している環境が多く、集中して動画をみてもらうのは至難の業ですが、「インタラクティブ動画」ならば、視聴者自身がアクションを起こすことで「記憶」としてインプットが期待できるので、従来の動画よりも深い印象を残せます。
「視聴者が自ら触る」仕組みということは、オリジナリティあるユニークなコンテンツを通じて、「ワクワク感」や「面白さ」さらには「驚き」を視聴者に伝えることに繋がります。
視聴者の満足度が上がれば、FacebookやTwitter、InstagramなどのSNSで自然とシェアされていくので、ローコストで多くの人に認知させることも可能です。上手く流行らせれば絶大なPR効果に繋がるでしょう。
ユーザーのデータを蓄積できることも、「インタラクティブ動画」のメリットといえます。
「動画内でどのクリックが多かったか」「どの経路からのアプローチが多かったか」などのデータを積み重ねていけるので、分析や改善がしやすくなります。ツールによって異なりますが「平均視聴時間」や「流入経路」そして「視聴の離脱ポイント」といったスタンダードな指標の他に、「ポップアップの滞在時間」「動画全体を通したタッチの総数」そして「どの場所に、何回タッチしたか」など、より深い解析データが得られます。こうして、視聴者の興味や関心、そして行動を正確に把握することで、消費に結びつけるためのプランからアクションまで、いわゆる「PDCAサイクル」のスピード化が実現します。
インタラクティブ動画制作の留意点
このように、魅力や期待要素が豊富な「インタラクティブ動画」ですが、留意点もあります。まず大切なのは、「何のためにインタラクティブ動画を作るのか」という目的の明確化です。目標もしくはゴールを設定し、問い合わせや購買、会員登録、来店予約など、動画を通じてユーザーの行動を考えることが、業績のアップには必要不可欠ですが、ゴール設定を間違えてしまうと、印象的な動画を作れたとしてもユーザーはただ「楽しかった」「面白かった」という感想だけで終わってしまい、消費行動につなげることは難しくなるでしょう。
「インタラクティブ動画」は、先述の通り、実際に動画に触れたり、体験したりすることで視聴者の心を掴み、消費行動を促すことで、高いプロモーション効果が期待できます。ところが、この手の動画制作の場合、得てして企業は「自分たちの伝えたいこと」を発信したがります。いわずもがな、視聴者にしてみれば、会社の伝えたいことよりも、どんな商品やサービスが揃っていて、それが自分たちの生活にどんなメリットをもたらすのかが最大の関心事です。こうした視聴者心理、消費者心理を踏まえた上で、「どのような体験をさせたいのか」を考えてシナリオを作らないと、自社の商品やサービスの消費には繋がらないしょう。特に、派手な演出に気を取られ、仕掛けが複雑になり過ぎたり、視認性や操作性に難が生じたりすると、視聴者は離脱してしまい、動画を制作したこと自体が無意味なものになってしまいます。「インタラクティブ動画」の導入を自社の商品やサービスの消費向上に結びつけるには、視聴者目線での制作は「絶対条件」といえるでしょう。
さらに、ユーザーの選択によってストーリーが変わるシナリオの場合、当然、ストーリーを複数準備することが不可欠になります。こうなるとかなりハードルが高く、必然的にプロの出番になります。制作会社は「どうしたら多くの視聴者に番組を観てもらえるか」というノウハウに長けていますし、スポンサーを意識した動画制作もお手のものです。まずは制作会社へ動画制作の相談を持ち掛け、アドバイスをもらってみては如何でしょうか?
テキスト:ナインフィールド
ディレクター 有明 雄介