私は、現在某キー局で、報道・情報番組を担当しています。取材で全国を飛び回る毎日です。この仕事をしていると友人などからよく聞かれることがあります。「仕事楽しそうだね」「面白そうな仕事ですね」私は大概こう答えています。「とっても楽しいよ。いつ何時、日本のどこに行くかわからないけど、ね」と。ひょっとしたら、ここは日本人らしく少しへりくだって「いやー、正直キツいだけで、そんないいものじゃないよ。」とグチのひとつでもこぼした方が酒席では盛り上がるのかもしれませんが、本当に楽しいのだからこればっかりは仕方がありません。
私が憧れる“できるディレクター”像
いわゆる“できるディレクター”聞くと、かっこいい映像手法、尖った表現、クリエイティビティに溢れた構成などを思い浮かべるかもしれません。確かにそれらの腕を持ったディレクターは“できるディレクター”でしょう。しかし私が憧れるのはそういった才気に溢れる特別な才能ではありません。自分が伝えたいこと、伝えたい側の目線を切り取ること−そういったちょっとした違いを生み出せるディレクターになりたいと日々精進しています。
何に”注目するのか?
例えば「ワイドショー」の面白さの差はどこから来るのでしょうか?日々起きている事件、事故を伝えるのですが、番組が違えど、起きている事象は同じであって、普通に作ろうとすると当然、同じような内容になってしまいがちです。しかし、ワイドショーにも厳然と人気番組とそうでないものが生まれてきます。各局ほぼ同じ素材を使いながらも生まれてくる“違い”。いくつか要素はあるのですが、一番の違いはズバリ“着眼点の違い”だと私は考えています。
同じニュースでも“目線”が違えば全然違う
「野菜高騰」を一つ例にしても取り上げ方は千差万別です。野菜高騰の原因に着目する「原因は天候不順 気象異変のワケとは?」野菜が出荷できない農家の苦悩「不作にあえぐ農家 春野菜収穫までガマン」家計に与える影響「“今夜はお鍋”は高嶺の花 食卓からお鍋が消えた!?」高騰で被害を受けている人「キャベツ高くてトンカツ屋悲鳴 おかわり禁止に」誰の立場で、どういった目線で物事を見るか−同じ事象を見て、“どう切り取るか”それこそがディレクターの腕の見せ所だと思っています。
人とは違う独自の切り口 それこそがディレクションの神髄
表現において、明確に“これが正解”というものはなかなかありません。どんな事象にも多角的なアプローチができることが、この仕事の醍醐味でありそこから何をチョイスするかがディレクションであると思います。世の中はSNSが広がり誰でも気軽に動画を投稿できる時代になりました。映像作品が身近になり、誰しもが動画を作るからこそ、我々ディレクターには今まで以上に“違い”を求められるようになっています。常に様々なものに興味を持ち、感性を磨き続けていき、様々な動画コンテンツにおいて“違い”を生み出せるよう精進したいと思っています。
テキスト:ナインフィールド
ディレクター 林 要