テレビでも人気!企業の裏側

テレビでも人気!企業の裏側
2022年10月10日 ninefield

ここ10年で、「会社の裏側」を紹介するバラエティ番組は、1ジャンルとしてすっかり定着した感があります。気づけば各局で“社会科見学”の要素を持つ企画やコーナーが目白押し。食品メーカーやレストランチェーンの工場見学をはじめ、だれもが知る大手企業から地域の中小企業まで様々な企業を徹底解剖する特集が人気を集めています。中でも「身近なことをより深く」という欲求を持つ人が増えてきていることを踏まえた企画が注目されています。今回はこうした「企業系バラエティ」にスポットを当て、増えてきた背景や多様化する演出の現状について、探っていきます。



 

 



「企業系バラエティ」誕生の背景

 「企業系バラエティ」が増えている背景として見逃せないのは、インターネットの拡がりなどに伴うテレビ広告の減収です。実は「会社」の商品を取り上げる番組やコーナーは少数とはいえ、以前から存在していて、そのほとんどが「物件モノ」や「是非ネタ」と呼ばれるスポンサーからの依頼に基づいた案件でした。放送ではCMの時間量が法律で決められていますから、番組内で「企業」や「商品」を全面的に取り上げてしまうと、番組ではなく、CMと見做される可能性があります。また、別の番組を提供している競合他社からのクレームも覚悟しなければいけません。こうした事情を反映して、ネットが出現する以前は、番組のコーナーなどで「ステルス的」に商品を紹介するスタイルが主だったといえます。

 ところが、ネットへの広告投下が加速するにつれ、テレビへの広告出稿がじょじょに減速してくると、局としては、スポンサーとの新たな関係性の模索を迫られるようになりました。事実、「企業系バラエティ」が番組のタイムテーブルを賑わすようになるのは、2005年以降のことです。しかし、そうした取り組みが進化して、こんにちのバラエティの現場では、目新しい切り口が続々と生まれています。ヒットの決まり文句である「ありそうでなかった」企業系バラエティは、業界の稼ぎ頭といってもいいジャンルに成長していて、まさに「ケガの功名」といえるかも知れません。

多様化する演出スタイル

 このように、業界の救世主として一翼を担う「企業系バラエティ」ですが、いざ、制作に取り掛かろうとすると、ともすれば「会社案内」風に陥りがちです。結果、どの番組も似たように見えるという意見もありますが、細かく見比べてみると、意外に違いは明らかになってきます。例えば、題材は外食チェーンなど一般的によく知られる会社にターゲットをあてることが多いですが、VTRでは社内のボヤキを入れてみたり、真実かあやふやな情報をぶつけてみたりして、笑いを誘うなど、登場する会社を持ち上げ過ぎないようにしながら、「人間味あふれる」ように見せる楽しさで視聴者の心を掴みます。

 また、海外の縫製工場や食品工場、アニメーション制作会社といった企業がアウトソーシングしている海外の施設や、自衛隊など、身近でないスポットに潜入するといった企画もファミリー層や子供から高い支持を集めています。例えば「何を作っているんでしょうかクイズ」や「潜入感」などは、視聴者の知的好奇心を刺激しています。ロケ地は、先述の海外をはじめ、国内では刑務所やテレビの視聴率を調べている会社など、「思わず潜入してみたくなる」場所がポイントです。

 また、潜入VTRに重ねて、ゲスト出演者の後頭部を画面下に配置しているのも演出の一手法になっていて、「一緒にアトラクションを楽しむ」感覚で視聴者に見てもらうための小技が効いています。特に、電車や飛行機といった“乗り物系”をテーマにした回のファミリー層の人気が高く家族で楽しめるバラエティになっています。ここで注目されるのが「画作り」です。カメラの潜入に合わせて細かい情報を小出しにするため、テロップを大量に出すなど、ゲーム画面のように画作りをする番組もあります。このように、単なる企業紹介で終わるのではなく、可能な限り、エンターテインメント性を織り込むことこそ、番組が続く命脈を握っているといえるかも知れません。

テレビマンの「視点」が面白さを紡ぎだす

 先述のような事情で、番組制作の現場には広告会社経由で、よく番組への取材依頼が舞い込みます。大抵は企業の広報担当者による売り込みですが、得てして、業界的視点のものが多く、一般視聴者には響きづらい場合も珍しくありません。反対に企業側が「面白いの?当たり前だよ。」というところが、取材するテレビマンの視点に刺さり、新たにネタとして、加わることもしばしばあります。

 当たり前ですが、テレビマンは各業界の事情に関して不案内な場合が多いです。したがってまっさらな視点で、異業種を見学し「こうなんだ!?」と驚くことは頻繁にあります。その驚きを視聴者にも同じように感じてもらいたいとなったら、広報担当者にとっては望外の喜びでしょうし、演出テクニックにも工夫の余地が生まれます。こうした新たな興味は、製品やサービスの紹介という枠を超えて、従業員などの趣味や特技、ときには仕事観までさりげなく織り込む「人肌感」につながります。当然、番組制作上、重要なキーポイントになることは論を俟ちません。

 先述の事情から、確かに一部には、こうした「企業系バラエティ」の増加を訝しがる向きもあります。しかし、逆に言えば、こうした案件が増えるほど、ディレクターにとっては、自らが培ってきた経験や視点を試せるチャンスになります。若いディレクターがあふれるアイデアを駆使して、単なる「企業案件」にとどめないという点で、腕の見せ所が増えたと前向きに捉えるべきでしょう。

企業バラエティの手法は一般企業でも「応用可」

 最近は、テレビに限らず、各企業が自社のHPなどで製品ができるまでの動画を公開しています。実際の工場見学や企業見学などの人気の高さは今も昔も変わりませんが、近年はオンラインで社会科見学ができるコンテンツの人気も高まってきました。テレビのようにクイズ形式にしたり、企業のボヤキなどを入れたりすることはハードルが高いですが、先述の通り、企業側が「当たり前」と思っていることでも、一般の人には「えっ!そうなの!?」という新たな発見や驚きが、社会科見学的なコンテンツの人気を支えています。こうした環境を加味すれば、一般企業にも「企業バラエティ動画」参入のチャンスは充分、あります。

 ただ、こうした動画コンテンツを制作するには、やはりプロへの依頼が一番の近道といえるかも知れません。豊富な制作経験から、企業や業務内容のPRポイントを熟知していますし、視聴者、つまり消費者がどんなところに興味を持っているかを考えた上で、構成案を制作してくれるでしょう。また、企画から撮影や編集、さらにはWEBなどへのアップまで、オールインワンでの対応が可能です。これを自社制作で完結しようとすると、片手間ではできませんし、クオリティ的に消費者の興味や関心を呼び込めるかも疑問符がつきます。「自社探検」や「自社潜入」といったコンテンツの制作をお考えの際は是非、制作会社への依頼を選択肢に加えることが、最適解といえるのではないでしょうか…。

テキスト:ナインフィールド
プロデューサー 松野 一人