ドローンが変えた空撮の魅力

ドローンが変えた空撮の魅力
2024年9月30日 ninefield

今や空撮といえばドローンを抜きには、語れません。「ドローンの空撮映像を見ない日はない」と言われるほど、一般視聴者にとっても身近な存在になっていて、活用事例も日々、増えています。これまでは撮影に技術を要した低空飛行の映像はもちろん、操縦技術の向上で、動く被写体と並行させたり、追従させたりしての撮影も可能になりました。
今や、映画やドラマ、テレビ番組だけでなく、商業プロモーションや観光PRなど、至るところで活躍しています。今までは見ることのできなかった角度、スケール感は、写真や単なる映像では表現できない迫力が伝わり、動画の撮影現場に必要不可欠なアイテムになりました。これまでヘリコプターやセスナが独占していた空撮の世界の「敷居」を一挙に下げ、アマチュアの参入を呼び込んだこともエポックといえます。今では、動画投稿サイトに、プロだけでなく、アマチュアカメラマンの作品も多数並び、中には世界で話題になる投稿も現れるなど、裾野は拡がる一方です。
その一方で、未熟な操縦による墜落や衝突事故も絶えず、社会問題化していて、過渡期の技術ならではの課題も抱えています。今回はドローンによって変わった空撮の撮影現場について、現状と未来を紹介しつつ、プロへ依頼した場合のメリットなども考えます。



 

 



ドローン撮影が普及した背景

ご存知の方も多いと思いますが、ドローンが出現する以前の空撮映像は、莫大な費用を支払って、ヘリコプターやセスナを手配して撮影されてきました。パイロットとカメラマンが機内に乗り込んで、撮影するので、燃料費や人件費がかかることはもちろん、運航の安全上、上空の天候も見極めなければなりませんでした。

特にヘリコプターはホバリングが利く上、セスナ撮影よりも安定性があるため高価で、予算の裏付けが無いと、なかなか依頼実現には漕ぎつけず、事件事故など、喫緊の取材を除けば、地方局などでは、「資料映像用」という名目で、数年に一度の頻度でしか撮影できませんでした。空港のない県の局では、隣県の飛行場までカメラマンを出張させ、対応していたという話もあります。

ドローンの登場は、こうした撮影環境に革命を起こしました。後述のように、申請が必要な場合もありますが、大掛かりな航空取材に比べ「必要なときに、すぐに撮影できる機動力」は、現場では重宝がられ、当初の低画質も技術の進歩で、徐々に改善。現在では4Kカメラ搭載の機種も登場するなど、臨場感や迫力を損なわない高品質な空撮映像が、安価に撮影できるようになりました。

当時はラジコンヘリも存在しましたが、ラジコンヘリが、すべてをラジオコントロール、つまり無線操縦で制御するのに比べ、ドローンはGPSやセンサーを使って、位置を捕えるため、ラジコンヘリよりもホバリング性能に長けるなど、高い操縦スキルを必要としない分、普及を後押ししました。

こうして、撮影のコストダウンが進んだ結果、報道現場はもちろん、映画を筆頭にテレビドラマ、バラエティ番組、アーティストのミュージックビデオ、観光プロモーション映像など、あらゆる場面でドローンが活用されるようになり、さらに、近年では花火大会、スポーツの試合、ブライダル関連など、各種イベントでも活躍分野は拡がりました。

中でもラグビーW杯で、日本代表が合宿での練習時に「ドローン空撮」を導入したことは、話題になりました。俯瞰の映像を使って、選手のポジショニングや、タックルで倒れた選手がどれくらいの早さで立ち上がって、ディフェンスラインを形成するかなどをつぶさにチェック。優勝候補の筆頭と言われていた南アフリカ代表を破る大金星に貢献したのは語り草になっています。

ドローンのメリット・デメリット

ドローン最大の魅力は、何といっても、カメラを積載できることです。4Kカメラを標準搭載している機種や、上位機種によっては、GoProや一眼レフカメラを搭載することもできます。高性能なカメラの小型化もドローンの需要を伸ばしている一因です。ヘリやセスナであれば、パイロットの操縦技量が撮影を大きく左右しますが、ドローンなら、操作技術さえ磨けば、質の高い映像が期待できます。

対象物から「引きの画」を撮ることによってその被写体の置かれている状況と周囲との関係性を見せることができるドローンならではの「後退上昇」をはじめ、俯瞰状態で被写体を横切るように撮影する「横切り」、機体が弧を描くように飛行する「ターン」さらには「回転上昇」など、バリエーションに富んだショットの撮影が可能です。

一方でこうした参入障壁の低下は、多くのアマチュアカメラマンを呼び込み、これまでは、考えられなかった事故も誘発するようになっています。先述の通り、ドローンはGPSを使って、位置情報を把握するので、トンネルなど、GPSが利かない場所ではコントロールを失ってしまいます。また、操作技術が習熟していないので、目視が出来ない範囲まで、機体が飛んでいってしまったり、人やモノにぶつかって、トラブルになったりしています。現在、重さ200g以上のドローンを飛行させる場合は、国土交通省や地方航空への許可が必要になりますが、その手続きはDIPSという、国交省のサービスを利用することで、従来よりも素早く申請を通すことができます。また、経験豊富なプロのドローンパイロットには、包括申請することが可能で、飛行時間が長い人ほど、信用が積み重なり、申請も簡略化されていると言えます。なお、飛行禁止エリアではない場所で、200g以下の軽量なドローンを飛行させる場合、国土交通省への申請は不要ですが、土地権利者や警察などへの許可は必要です。

ドローンの「免許」ですが必須ではありません。「操縦者技能証明」と呼ばれる国家資格があり、無人航空機を飛行させるのに必要な技能(知識及び能力)を有することを証明する資格制度があります。
この国家資格を取得することで、飛行場所や飛行方法によっては従来の許可・承認手続きを省略できる場合があり、国家資格を取得する一番のメリットと言えます。

リスクや手間の軽減ならプロへ依頼を!

ドローン撮影を自分でやろうと思ったら、機材購入のほかに、面倒な申請や万一の際の保険費用など、かなりの高額を覚悟しなければいけません。よしんば、高価な機体を購入しても、撮影には技術が必要です。そもそもドローンカメラは性能差が大きく、技術やコツではなかなか溝は埋まりません。さまざまな条件下で、欲しいショットを撮るには、プロへの依頼が賢明です。

ドローン撮影はやろうと思えば、ほとんどコストをかけずに行えますので、相場はピンキリになり、個人で請け負う人から、本格的な業者まで選択肢は幅広くなります。例えば、個人で請け負う人などは、3万円以内で撮影が可能な場合もありますが、副業でやっていたりして、あまり高度な撮影は望めません。もし、失敗しても笑って済ませられるような撮影ならば、個人でドローンを購入して撮影しても構わないでしょうが、クオリティが求められる撮影ならば、「プロへの依頼という選択肢」は確実に高まります。

プロへ頼めば、撮影技術や自然条件への対応などといった経験がモノをいう分野のほかに、先述のように、許可申請の通過や保険加入の手続きなどが、一括で依頼できます。アマチュアでは不可能なクオリティの高い映像を撮ってもらえる上に、手続き一切をお任せできる優位性は、充分、魅力といえるでしょう。もし、プロへ依頼することが決まったら、価格だけでなく、経験や、欲しい映像、現地の状況など、打ち合わせを繰り返しましょう。ドローン撮影は新しい業界なので、業者のクオリティも不安定です。見積もりをなるべくたくさん取り、その中から、ベストな業者を選ぶことが空撮成功のカギを握っていることは論を俟ちません。

テキスト:ナインフィールド
ディレクター 林 要