動画と言えば、少し長めでストーリー性やインパクト、ユニークさを持つものが人気というイメージがありますが、最近は「1分動画」と呼ばれるジャンルが大ブレイクしています。内容も様々で、美しい風景やオシャレなファッション、さらには料理レシピやメイクなどのハウツー動画まであります。時間が短い分、スピーディーな作品が多く、スマホからも手軽に視聴できるので、SNSが展開の火付け役になっています。今回はここ1年で、急速にブレイクしてきている「1分動画」について、その特徴や魅力、さらには制作の際の留意点などについて俯瞰していきます。
1分動画の特徴と魅力
「1分動画」とは、文字どおり1分程度の尺に収められた動画のことです。SNSのプラットフォームによっては「リール動画」や「ショート動画」と呼ばれています。先述の通り、従来の動画は、ある程度の尺(時間の長さ)を持たせてストーリーを展開したり、じっくりと解説したりするものが主流でした。しかし、最近では30秒や1分といった尺の短い動画に人気が集まっています。事実、SNSをはじめ、動画投稿サイトでも目にする機会がとみに増えています。
では、1分動画の魅力はどこにあるのでしょうか。まず挙げられるのは「飽きずに最後まで見ることができる」という点です。動画の尺が長いと、途中で飽きて見るのをやめてしまったり、最初から見る気を失くしたりする人も少なくありませんが、その点、1分動画は尺が短いので、視聴者が途中脱落するリスクが限りなく皆無に近づきます。
当然、短い時間で内容が完結していますから、物語でいう「一話読み切り」スタイルになっているのも、人気の要因です。1分という長さは、短いようでいて、意外に多くの情報を盛り込めます。それでいて視聴者が最後まで見てくれている可能性も高いので、情報が伝えやすくなります。仮に興味の無いジャンルでも1分という短時間なら、視聴へのハードルはぐっと下がりますし、長時間の視聴は敬遠されても1分ということでちょっと見てみようかなという関心を引くこともあるでしょう。もちろん、見終わった後の満足感も高いですし、忙しい人でも、1分動画なら隙間時間に見ることが可能です。
最後に見逃せないのがスマホです。1分動画が大ブレイクしている要因の一つには、スマホの普及が関わっているからです。スマホさえあれば、自宅の内外を問わず、いつでも1分動画を見ることができますし、SNSで拡散されやすいことも、人気の拡大に拍車をかけています。こうした要因が重なって、1分動画のジャンルは、料理やDIY、ファッション、メイク、ヘアアレンジ、ネイルなどマルチに拡がっています。中には、実演する様子を、早送りやコマ送りを駆使して、分かりやすくまとめた動画もあり、多忙な人たちから好評を博しています。
「1分動画」向きの企業やサービスは…?
1分動画の活用を虎視眈々と狙っているのが、企業ビジネスの世界です。動画の作り方次第では広告効果を大いに高める可能性が魅力的に映っていることが理由です。先述のような事情を踏まえると、1分動画が向いている企業やサービスがおのずと浮かび上がってきます。例えば料理動画なら、食品会社や調理器具メーカーとの親和性がありますし、DIYならホームセンターや100均ショップなどが候補になります。ファッションやメイクなら、アパレルや美容関係が関連業界として想定されるでしょう。
もちろん、他の業界やサービスが1分動画に不向きというわけではありません。1分あれば、企業やサービスの情報はある程度は、詳しく伝えられますし、業界の特性ごとに演出の内容をアレンジすれば、応用範囲は無限です。例えば、住宅の建設や販売などでも、作り方のポイントさえ押さえれば、撮影された住宅の魅力を十分に訴求できます。つまり、どんな企業やサービスでも1分動画を活用するチャンスと価値は十分に拡がっています。
1分で最大限の訴求効果をもたらすには…
では、1分動画で最大限の訴求効果をもたらすには、どのような点に留意したらいいのでしょうか?これは尺の長短を問いませんが、動画作成の目的を明確化した上で、まずは脚本と構成の作成にとりかかる必要があります。目的が明確で、かつ分かりやすく情報をまとめた1分動画を作成できれば、多くの視聴者の目にとまり、それこそ期待の「SNS拡散」も実現するでしょう。
論を俟ちませんが、たった1分の動画でも、視聴者に必要な情報を伝えるためには、多くのカットをつなぎ合わせていく必要があります。この点を踏まえると、構成は「オープニング」「コンテンツ」「エンディング」の3部構成とし、1カットに時間をかけすぎないことが必須になってきます。もちろん、尺が短いからといって、長い動画よりも簡単に制作できるというのは早計です。なぜなら、短ければ短い程、カットはもちろん、テロップやナレーションといったパートをより推敲する必要が出てくるからです。
尺が短いということは、盛り込む情報についても、より厳選した上で、短いカットをテンポよくつなぎ合わせることが重要になってきます。具体的には1カットが10秒を超えると、1分動画の中では長く感じられますし、それ以上の尺だと、全体のバランスを崩してしまって、せっかく期待した広告効果が見込めない事態にもなりかねません。
この他、掲載するプラットフォームにもよりますが、視聴されやすい動画制作を進める上でスマホユーザーへの意識は欠かせません。具体的には、ユーザーがスマートフォンで手軽に見られるよう、正方形で撮影すれば、わざわざスマホを持ち替えなくても視聴できます。つまり「スマホユーザーがSNSで拡散しやすい」動画を意識すること。その点では「縦型動画」なども十分な選択肢といえるでしょう。
「自社制作と外注」どちらに軍配?
ここまで「1分動画」の特徴とメリット、それに制作上の留意点について、ご紹介してきましたが、いざ、制作するとなると、クライアントの多くは「自社制作か外注か」で悩むと思います。確かに自社制作の場合、外注費はかかりませんし、マイペースかつ思い通りに動画を編集できるでしょう。その反面、動画のクオリティには不安が残りますし、多大な労力や機材を揃える費用がかかります。安い機材なら、5万~10万円程度で揃えることもできますが、専用の撮影機材だと、やはり数十万円の「心積もり」は必要でしょう。その点、制作会社への外注なら、委託費用こそ掛かりますが、機材を揃える必要はありませんし、高いクオリティの動画が期待できます。さらに、社員の労力を削減できたり、企画や構成についても、プロならではのアドバイスを受けられたりします。浮いた社員の労力は他の業務へ回せます。
最近では、動画の企画や構成をはじめ、撮影や編集まで「オールインワン」で請け負う制作会社が数多あります。ビジネスの手段に1分動画の導入をお考えの方は、まずはプロへの相談を選択肢に加えてみてはいかがでしょうか。きっとウィンウィンの結果が待っているはずですし、ひょっとしたら、動画導入が次のビジネス展開の奇貨につながるかもしれません。
テキスト:ナインフィールド
ディレクター 林 要