テレビに進出するインテリアコーディネーター

テレビに進出するインテリアコーディネーター
2022年4月18日 ninefield

 最近、テレビを観ていると、家具や雑貨など、「インテリア」に関するコーナー特集や番組が放送され、人気を集めています。世情に鑑み「おうち時間」が増える中、テレビへのインテリア業界の進出は、活発化の一途をたどっています。SNSの影響などもあって、インテリアにこだわる人も増えている中、今回はテレビ業界とインテリアコーディネーターの関係について、現状や今後について探っていきます



 

 



インテリアコーディネーターの概観 

 そもそも「インテリアコーディネーター」は顧客の要望をヒアリングした上で、建物内部のインテリアについてアドバイスし、総合的にその空間をコーディネートするのが仕事です。インテリアは、その空間が快適で使い勝手のいい場所になるかどうかを大きく左右するとても重要な要素です。人の五感を刺激して、リラックスできたり、アクティブになれたりする空間、家族や友人と楽しく過ごせたり、勉強や仕事に集中できたりする空間などを演出します。そんなインテリアを創り出す仕事がインテリアコーディネーターです。顧客と打ち合わせを重ねながら「どんな部屋にしたいのか」「どのように暮らしたいのか」などの要望を引き出し、そのイメージを具現化するプランを立てていきます。

 具体的な仕事の流れとしては、顧客の要望や予算などを丁寧にヒアリングし、その結果を基にインテリアのイメージを考え、図面や写真などを駆使して具体的にまとめていきます。顧客へカタログやサンプルを提示したり、ショールームへ同行したりして、商品を選ぶお手伝いをした後に、見積書を作成。予算とすり合わせた上で、見積金額に承諾を得られたら契約を結びます。もちろん、着工後の現場と顧客との間の調整や、工事完了後の不具合のチェックも欠かせません。

 インテリアコーディネーターといえば、かつては、住宅メーカーや内装&リフォーム業者、家具の販売会社、そして家具やインテリア雑貨の専門店やデパートなどに所属するのが一般的で、仕事もそうした先からの受注がメインでした。ところが昨今のSNSブームなども手伝い、企業や個人単位でコーディネートを依頼するケースが急増。近年は組織から独立して、フリーランスで活動する人が目立ってきています。

テレビ業界との関係

こうしたフリーランス化に注目したのが、テレビをはじめとする映像業界です。それまでドラマやバラエティなどのセットは、局の美術セクションで担当するのが主でしたが、業務繁忙などで手が回らない場合は、舞台設定に合わせて、インテリアコーディネーターを起用し、ドラマやバラエティ、CMのインテリアといった分野で、アドバイスを仰ぐケースが増えてきました。中にはドラマで使用された家具が好評を博し、思わぬところから、人気に火が付くといったうれしい誤算もあります。
 
 加えて最近は、キー局、ローカル局を問わず、インテリアやリフォームなどを取り上げるテレビ番組が続々と企画され、インテリアコーディネーターが案内役になって出演する番組も目立ち始めました。これは家具メーカーや販売店がスポンサーになっているケースが多くなっています。例えば、インテリアコーディネーターが、部屋の模様替えを希望する一般人のお宅を訪れ、タイアップした販売店やメーカーの家具を取り入れたコーディネートで、室内を魅力ある空間に変えていく模様を「ミニ枠」で放送するなど、効率の良い番組づくりにつなげているケースもあります。もちろん、タイアップ元はスポンサーとして、営業面でもつながりを深めていきます。

テレビ進出の上で求められる人材像

これまでご紹介してきたように、インテリアコーディネーターは、一義的には、内装で扱う建材や照明器具、壁紙、家具などに関する幅広い知識をあることを最低条件に、プロとしてのアイデアやセンスを活かして、より快適な空間を提案していく仕事です。個人住宅にとどまらず、店舗やオフィス、それに公共施設など、さまざまな場所で活躍します。住まいにかかわる業界やインテリア業界志望の人が多く、資格としても、人気になっていて、近年、注目の度合いが高まっています。

 インテリア業界は、照明や家具など、流行の移り変わりが激しい業界です。数年前にはなかったデザインや素材がもてはやされることもあり、要望も流行に影響を受ける場合が多いです。ですから、流行に敏感で常にトレンドを意識しておくことが大切になってきます。
常に新しいことを学ぶのが好きな人、最先端の流行に触れられる展示会などに出かけて、積極的に情報収集するのが楽しみという人にはお勧めかもしれません。年代による好みや流行の違いを把握しておくことも必要といえます。

 一方で、インテリアコーディネーターを取り巻く業界はここ数年、変化の波に揉まれています。これまで主戦場としてきた住宅業界は、少子高齢化などで新築物件が減る反面、有り余る中古物件を再利用するためのリフォームが増えてくると予想されています。中古リフォームは、新築よりも条件面で制約が多く、建築に関するより深い知識と経験が求められます。リフォームのテレビ番組は人気があります。ですから、インテリアの知識以外にも、住宅の構造や法規、給排水や電気などの工事関連、さらには耐震や断熱などの住環境といった分野の知識を積極的に学び、インテリアに結び付ける姿勢が不可欠です。
 
 従来、テレビ業界で求められるインテリアコーディネーターの役割は、番組の設定に合わせてインテリアを配置したり、インテリアショップやメーカーとのパイプを紹介したりといった仕事がメインでした。しかし近年は、家具の配置や内装のデザインといった従来の業務要素の他に、例えば、リノベーションや不動産関連など、住まいに関する周辺知識も求められるケースが出始めています。インテリアコーディネートは確かに室内空間を対象にした仕事ではありますが、単にインテリアに詳しいだけでは、プロとしての仕事は限界が出てきますし、他との差別化も図れません。換言すれば、コーディネートセンスのスキルは最低限、持ち合わせた上で、プラス・アルファの強みを持っていないとテレビからのオファーもかからないでしょうし、コーディネーターとしての生き残りも難しくなってくるといえます。

 もっとも、自分で自由にデザインをして空間を作っていくデザイナーとは違い、インテリアコーディネーターは、あくまでクライアントの要望に応えるのが大前提の仕事。クライアントの要望を正確に汲み取って、提案につなげるヒアリング力が、とりわけテレビの世界では利いてくるように思います。まして、これからは動画配信サイトなど、テレビ局も従来のプラットフォームから飛躍して、作品を配信する時代。番組やCMの総量の増加に伴って、映像業界におけるインテリアデザイナーの需要もますます増えることが予想されます。プロデューサーやディレクターの意図を如何に正確に汲み取り、かつ的確なアドバイスやコーディネートに漕ぎつけるか。単なる「インテリア好き」ではなし得ない「戦略」がこれからのインテリアコーディネーターに求められる必要十分条件といえそうです。

テキスト:ナインフィールド
ディレクター 有明 雄介