地方局では以前からビジネスモデルとして確立している所もありますが、私立の小中高校や国公立を含めた大学の「紹介番組」「紹介ビデオ」の制作に脚光が集まっています。学校の紹介といえば、パンフレットやリーフレットなど、紙媒体が代表的でしたが、動画投稿時代の本格化を迎え、最近は動画で学校の魅力をPRするケースが増えています。他の学校と違う魅力や特色など、視覚的に情報を得られる動画で「学校の雰囲気=校風」を紹介し、ポジティブなイメージを受験生や教職員に持ってもらうことで、熾烈化する学生獲得競争を乗り切りたい思惑も透けて見えます。今回は、学校紹介動画増加の背景やメリット、効果的な訴求ポイントなどを考えていきます。
学校紹介を動画化する背景とメリット
連日のように、新聞やテレビニュースに登場する「少子化」関連の記事。言わずもがな、教育業界を直撃しています。特に私立学校では受験生の奪い合いが、学校存続の生殺与奪を握ることになるので、学校の魅力を多くの受験生や保護者に訴求することは極めて重要な「生存戦略」になっています。こうした中で、近年、学校紹介を紙媒体から動画へシフトしてきていることは、必然の理と言えるでしょう。最近は私立だけでなく、多くの国公立大学でも、学園紹介を映像化するようになり、地方では週一回、5分程度のミニ番組枠で、授業や研究の取り組みを紹介する番組も出始めています。一方で、ある私立大学では、卒業生の人気お笑い芸人を動画進行のナビゲーターに起用し、学生時代の思い出話を交えながら、恩師や後輩たちとの旧交を温める演出が話題になっています。
学校紹介を動画化する最大のメリットは、文章のみでは伝わりにくい「校風」をはじめ、先生や生徒の雰囲気などを視覚的、聴覚的に伝えられることです。仮に情報が古くなったとしても、スーパーやカットの差し替えで対応でき、一度、印刷してしまったら、書き換えが利かない紙媒体に比べ、はるかに柔軟性があります。
また、多くの保護者や生徒に情報を届けられるという点でも優位性は高いでしょう。例えば、オープンキャンパスや説明会ですと、参加人数に制限がありますし、時間と場所にも縛られますが、動画化すれば、集中アクセスでサーバーの限界を迎えない限り、ほぼ無限に視聴のチャンスが拡がりますし、遠方の生徒や保護者にも見てもらえるので、訴求範囲も飛躍的に高まります。もちろん、先述のオープンキャンパスや学校説明会をはじめとした対面の場面でも活用が可能で、結果として、生徒や保護者の間で拡散される可能性も出てくるでしょう。こうした積み重ねが学校そのもののブランディングにつながります。
どんな動画が心をつかむのか…
では、実際に受験生や保護者、あるいは教職員に「魅力ある学校情報」を提供するにはどうしたらよいのでしょうか?まず、大切なのは、紹介動画を作る目的とターゲットを明確にし、生徒や保護者、企業や地域住民など「見る側」を意識して制作することに尽きます。
例えば、生徒や保護者に「楽しそう」と思ってもらえる動画に仕上げるには、学校生活に関する動画をドキュメンタリー形式でまとめるのもアイデアですし、アニメを組み込んで、若者が見やすい演出を採り入れても良いでしょう。そこで「肝」になってくるのが、インタビュー動画の使い方です。
インタビュー動画は、保護者と学生の両方に効果のある万能なコンテンツです。生徒や教員の生の声を届けることで、情報の信頼度が高まり、雰囲気を伝えやすくなります。さらに言えば、インタビューの中身から、「その学校で何が学べるのか」や「カリキュラムの豊富さ」などの訴求を通じて、生徒や保護者だけでなく、企業に向けても発信することが期待できます。具体的には「英語教育に力を入れている」「〇〇部が全国大会へ出場」「難関大学合格実績〇〇名」といったアピールポイントを訴求します。大学の場合は、就職や資格試験の実績も盛り込めば、より魅力が増すでしょう。この他にも、他校にはなかったり、その地域ではあまり導入されていなかったりする施設や設備がある場合は、教学面で絶好のアドバンテージになります。
学校の周辺環境も含めた紹介動画を制作するのもおすすめです。特に地方から大都市圏の大学へ進学する場合、キャンパス環境の情報を事前に仕入れておくことは、大きな安心につながります。加えて、生徒や保護者だけでなく、地域住民や企業などにも、学校とその周辺の魅力を伝えることができます。このように、学校紹介動画は多くの人に興味を持って見てもらいやすく、学校をはじめ生徒や保護者、さらには地域住民や企業にとってもメリットが出てきます。
制作上の留意点
では、学校紹介を動画化する上で、どんなところに気をつければ、よいのでしょうか?まず、今時の受験生や保護者の多くは、スマートフォンを使って情報収集する人が多いです。このため、モバイルで見た時に違和感がないように制作することが必要でしょう。例えば、30分の動画を一本制作するより、5分で一つの項目が完結するような構成の動画を6本に仕上げれば、通勤通学の途中でも気軽に見られます。できるだけ伝える情報を厳選し、最後まで見てもらえる内容を意識することが動画制作成功のカギを握るといえます。
コンテンツを決める上での留意点は、ターゲットとなる人が興味を持ち、視聴する可能性が高まるよう、分析を徹底することです。例えば、難関大学に進学したい生徒は、進路実績を重視するでしょうし、全人教育で子供を育てたいと考える保護者は、教育環境を最優先の選択基準にするでしょう。スポーツや芸術で身を立てたいと思う志願者は、部活動の実績や運動施設が進学先を決定する重要なポイントになってきます。つまり、その学校がどんな学生や生徒を求め、将来的にどう育てたいのかによって、動画のコンテンツは大きく変わりますから、受験生にとって、効果的だと考えられる内容をまとめた上で、動画制作に取り掛かる必要があります。
プロへの相談を選択肢に…
こうしたノウハウは、アイデアとしてはあっても、一般の人にはなかなか具現化しにくいものです。そこで、制作会社をはじめとしたプロへの相談を考えてみてはいかがでしょうか?制作会社ならば、撮影の経験は豊富ですし、学校の魅力をどう映像化したらよいかというノウハウに長けています。きっと、学校側の立場に立った動画制作のアイデアを提供してくれるでしょう。
そもそも、学校に編集や撮影機材を常備しているところはごく僅かでしょうから、自校で全てを賄おうとする場合、機材の購入に伴うコスト増はもちろん、撮影後の編集といった作業が教職員の仕事の負担増につながることは論を俟ちません。結果、学校本来の業務に支障をきたすようでは、受験生や保護者以前に、在校生の信頼がガタ落ちになってしまう可能性もあります。その点、制作会社ならば、機材や編集といった技術面での心配は無用ですし、ナレーションやBGMなどの著作権関連も一括で処理できます。ここはぜひ、制作会社への依頼を最有力の検討材料に加え、学校本体は、教学と経営に集中した方が、受験生・在校生・学校三者にとって、ウィンウィンになるのではないでしょうか。
テキスト:ナインフィールド
ディレクター 北原 進也