会社員で企画や営業部門に配属経験のある人は、一度は社内でプレゼンをする経験があると思います。プレゼンを上手にすることが会社の業績を上げるきっかけになることも少なからずあるでしょう。ただ、漫然とプレゼンに臨んだだけでは、自身のプレゼンの長所や短所を客観的に把握し、改善に結び付けることは難しいと思います。そこで、社内発表会を動画撮影する重要性がクローズアップされてきています。今回は一般企業でプレゼンに動画を導入するメリットについて、探っていきます。
プレゼンを動画撮影するメリット
まず、プレゼンを動画化するうえで、最大のメリットは、自分を俯瞰的、客観的に見ることができる点です。例えば動画を見直した際に「プレゼン資料と喋りがずれていないか」、「人から見ると自分の喋り方はどう見えているのか」「声質や話すスピード、発音は分かりやすいか」といった技量面はもちろん、清潔感や視線、それに表情が笑顔かといった印象面など、様々なチェックが可能です。
いわずもがな「プレゼンは1回勝負」ですから、その様子を録画しておけば、後で何回も見直すことができます。ということは、その場ではわからなかったことも動画を見直すことで気づくことも多くなります。いわば反省材料として活用が可能ですし、動画で収録してネットにアップすることで、その場に同席できなかった人からもアドバイスを求めることが可能です。最近は動画にメモを記入する機能がついた便利なサービスもありますので、そうした機能を利用するのも手です。次回への改善策に大きく資することは論を俟ちません。
動画撮影の際の基本的な「思想」
プレゼン力向上の必須ツールとして動画を活用する場合、練習用として、スマホなどで録画してもらうのもいいでしょう。ただし、後述しますが、カメラのポジションによっては音声がクリアに録れない場合もありますので、注意が必要です。
また、最近は時節柄、オンラインプレゼンも増えてきています。この場合、対面のプレゼンとは雰囲気が違うので、動画に撮っておくことで、オンラインに留意したプレゼンになっているかどうか確認することができます。
そして、最も大切なのは、「社内プレゼンが社員を育てる」という共通認識です。人前で話す機会というのは、誰でも初めはそれほどあるわけではありません。それが、会社で徐々に経験を積んでいくに連れ、増えていきます。部下に話をすることも含め、伝えなくてはならないことをどう伝えるのかは、経験と努力である程度カバーできます。この思想を社内活用に置き換えると、例えば、定期的に報告会でプレゼンの機会があれば、その場限りだけでなく、報告会そのものを動画でアーカイブすることも一つの活用法といえます。それはきっと、会社並びに社員の大切な資産となることでしょう。
動画化する際の留意ポイント
では、プレゼンを動画化する上で、いくつかの重要なポイントを考えていきましょう。まず大切なのは「プレゼン中の社員の表情をしっかり撮る」ということです。プレゼンイベントの場合、ともすれば、内容を映し出しているスクリーンのアップを多用してしまい、発表者の表情は後回しにされがちですが、収録後、いざ編集作業に入ると、スクリーンのアップが続くので、単調に感じてしまいます。発表するのは当然、人間なので、発表者の表情次第で、訴求効果は大きく変わってきます。発表者の表情はしっかり押さえておきましょう。
出来れば、カメラは2台以上用意した方が、後で編集する際に非常に役立ちます。一般の人だと、カメラは1台だけで十分と思いがちな方もいるでしょう。確かに数分の素材なら我慢できますが、これが10分を超えてくると、映像の単調さが悪目立ちするようになり、人に見てもらうことを前提とした場合はおすすめできません。もちろん、機材を揃えたりするなど、一般企業ではハードルが高い場合もありますが、通常、1台で撮影するところを2台使用するだけで、映像の見応え度は格段に向上します。ましてや、社員だけでなく、その家族や関係者も視聴する場合、このちょっとした「心遣い」で出来栄えが大きく変わってきます。
ただし、カメラマンは1人で充分です。なぜなら、2台のカメラの内、1台は固定したカメラとして扱うからです。固定カメラは、できれば会場の正面に陣取り、広めの画でサイズを固定するのがベストです。プロジェクターを使う機会も多いと思いますので、その場合は、スクリーンと発表者が余裕をもって収まるサイズを心がけましょう。
もう1台のカメラにはカメラマンをつけます。当然、固定カメラとは別のサイズで撮影しますから、発表者のバストアップを基準に、表情のアップを狙ったり、あるいは客席のリアクションを狙ったりするいわゆる「インサートカット」を挿入することが可能になります。
実は一般の人や撮影初心者の人ほど、ズームやパン、チルトをしたがります。これが2秒や3秒ごとに出てくると、観ている人は落ち着きませんし、後日の編集作業でも、とても手間取ります。最低、ワンカット10秒ほどを心がけて、サイズやインサートカットに切り替えるようにしましょう。
万一、カットの切り替えに失敗しても、固定カメラがバックアップの役割を果たしていますので、安心して撮影に臨めます。
音に気を配る
もう一つ、注意しなければならないのが音です。よく考えるとわかりますが、音は映像の要です。一見、カメラマイクで十分だと思いがちですが、できるだけカメラマイクは避けましょう。いわゆるホームビデオ用のカメラの場合、内蔵マイクは、カメラの周辺の音をムラなく収録できるよう「無指向性」になっている機種が主流です。ですから、限りなく発表者に近づけば、はっきりした音で収録できますが、遠くなるほど、クリアな収録は望めなくなります。
この問題を克服するには、いわゆる発表者にピンマイクや棒マイクを付けて撮影すれば、クリアな音の収録が実現します。また、会場のPAにミキサーがついている場合は、余っている外部端子から、アッテネーターという抵抗装置をかませて、カメラ側のマイク端子につなぐこともできますが、配線をはじめ、一般の人にはなかなか難しいといえます。一番良いのはピンマイクですが、数万円程とけっして安くはありません。
ピンマイクが用意できない場合は、スマホのボイスメモ機能で録音しますが、スマホをなるべく発表者に近づける必要があるので、胸ポケットに入れてもらうなど、事前に発表者にお願いをしておく必要がありまする。この他、ボイスレコーダーを使ったり、1000円から2000円程度で売っているスマホ用のピンマイクを仕込んだりすることも選択肢ですが、やはり出来栄えには不安が残ります。
プロへの相談も選択肢の一つ
これまで紹介してきた通り、一般企業が高価な撮影機材を揃えたり、後から編集作業を始めたりするのは、他の業務との兼ね合いを考えれば、負担が大きいといえます。何よりも動画撮影の経験に乏しいですから、うまくいかないことも多々、出てくるでしょう。そこで制作会社など、プロへの相談を考えてみてはいかがでしょうか?プロならば、経験も豊富ですし、機材面も心配要りません。パワポなどで制作したスライド資料を映像にインサートして、見やすくするのもお手のものです。出来栄えの点からもぜひプロへの相談をお勧めします。
テキスト:ナインフィールド
ディレクター 村松 敬太