テレビCMなどで観光地のきれいな映像を見て、「旅行に行きたい」と思ったことがある人は多いと思います。動画で視聴者の興味や好奇心を刺激することができるので、旅行会社や観光客を誘致したい地域のPRにはおすすめです。観光や旅行業界は以前から動画の活用が比較的盛んな業界でしたが、実際の旅行のPRに加えて「旅のオンライン化」が進むなど、これまで以上に動画の活用が活発化しています。今回は「観光・旅行業界が動画を活用するメリット」を紹介するとともに、訴求を高めるための戦略や、シーン別の活用法などを探っていきます
業界との相性は抜群
観光や旅行業界で動画活用が盛んになる前は、テレビCMが訴求の主流でした。しかしテレビCMは15秒や30秒といった長さ(尺)の制限がある上、放送法による表現の制約も多く、高い料金の割には、本当に視聴者へ魅力が届いているのか疑問な点がありました。そこに現れたのがネット投稿の動画です。時間制限はありませんし、柔軟に色々な企画を作れるので、痒い所に手が届くような情報や企画を発信できることは、デジタルシフトが顕著な若年層へのリーチにつながりました。動画投稿サイトを開けば、こうした旅行系のPR動画が百花繚乱です。
動画は、テキストや写真よりも伝わる情報量が多いのが魅力です。旅行雑誌やパンフレットなどは、写真の情報が想像と違ってがっかりすることもありがちですが、動画ならば、心配無用です。映像と音声でその場の雰囲気が余すことなく伝わります。編集如何で、周辺の観光情報も盛り込めるので、視聴者は観光プランを立てやすくなります。
また、動画なら言葉がわからなくても視覚的に理解できるので、外国人観光客にも魅力を伝えることができます。予約サイトやホームページへ動画を埋め込むことも可能ですから、プランの内容や観光地にすでに興味を持っていて、さらなる追加プランを検討している人へも訴求効果が期待できます。こうしたキッカケで「興味が無くても、つい見てしまった動画で旅行先に決めた」または「旅行先を変更した」など、新たな旅の需要開拓につながるかもしれません。
動画の訴求を高める戦略
では、動画の訴求効果を高めるにはどんなことに気を配ったらよいのでしょうか?まず、思いつくのは動画を掲載できる場所ならどんどん掲載し、人目に触れるチャンスをたくさん作るということです。
例えば、尺が短い動画は、認知度向上などの目的でYouTube広告やSNS広告に利用することが可能です。その反面、旅行のニーズは個人差が大きく、視聴してもらいたいターゲット層を明確にすることも重要になってきます。例えば、赤ちゃんがいる家族なら、キッズルームやおむつ、ベビーフードなどのサービスがあるかどうかといった情報はありがたいですし、高齢者向けなら、ホテルや旅館に段差が少ないことやスロープがあるという情報を提供すれば、需要喚起につながるかもしれません。さらに、若者向けなら、観光地周辺の食べ歩き情報やSNSにアップしたくなる「映え」写真が撮れるスポットをさりげなく入れ込めば、好評を博すでしょう。海外旅行のプランなら、想定されるトラブルや回避する方法を紹介することで、安全の確保につながります。このように、「旅行」というジャンルはターゲット層の幅が広いので、いかにターゲットを定めて、ターゲットの欲しい情報を動画に盛り込んで制作できるかがマーケティングの命脈を握るといえます。
動画制作のシーン別活用法
では、旅行や観光動画を具体的にどう活用したらいいのでしょうか。まず、真っ先に思い浮かぶのが、「ツアー紹介動画」でしょう。ツアー紹介動画は、ツアーの内容や雰囲気を具体的に伝えたい際に役立ちます。
ツアーの場合、写真だけだと魅力や雰囲気が伝わりにくく、「実際に参加してみたら想像と全く違った」と失望する例も少なくありません。こうした事態を極力避けるため、事前にツアー内容を詳しく知っておきたいという利用者ニーズは理解できるでしょう。これを動画化すれば、ツアーの主な流れはもちろん、実際にツアーに参加している人の映像を使うことで、利用客はツアーの内容をより想像しやすくなります。さらに、ツアースポットまでの移動手段も映像つきで紹介すれば、顧客が実際のツアースケジュールをより想像しやすくなります。
オンライン相談やツアー詳細の説明についても動画効果が期待できます。これまでは直接、旅行会社に行ったり来てもらって旅行商品を説明する、いわば「オフライン相談」が主流でしたが、顧客側の負担が大きく、集客面での不利は否めませんでした。しかしオンライン相談なら、場所や時間を問わず、相談ができるため、利用客にとっては「相談してみよう」と腰を上げやすくなります。
ここにきて最近は、現地ガイドが街を散歩したり、観光地の様子をZoomなどで生配信したりする「オンラインツアー」も注目を集めています。すでに大手の旅行会社が導入していて、利用客は実際に旅行に行っているかのような体験ができるというのがセールスポイントです。現地の様子をきれいに映してくれる高画質なカメラや、ガイドの声を確実に拾う高性能マイクを使うことで、利用客側はストレスなくオンラインツアーを楽しめます。
意外なところでは、採用に関しても、動画の貢献度は大きくなっています。旅行会社は、華やかでやりがいのあるイメージと、忙しくて激務といったイメージを併せ持つ業界です。採用動画では、業務が大変そうというイメージを払拭するために、勤務形態の透明性をアピールすることで信頼性が増し、人材獲得につながるでしょう。また、楽しそうに仕事に取り組む姿を映し、やりがいを強調することも有効です。
膨らむインバウンドへの期待
インバウンド対策も動画市場の拡大が期待できます。外国人に、日本ならではの文化や魅力を目と耳を通して伝えることができるため、パンフレットよりも訴求力が高く、外国人観光客の誘致に役立ちます。動画が魅力的だと感じてもらえれば、ツイッターやインスタグラムなど、世界中の人々が利用しているSNSで拡散されるケースもあり、国境を越えて、動画を見てもらえる機会が増えるという利点もあります。インバウンド対策動画を制作する際は、国によって興味を引く内容や習慣が違うため、ターゲットとする国ごとに動画構成を変える必要が出てきますが、予算の関係上複数の動画を作れない場合もあります。ですから、世界中の人に見られることを想定し、字幕やナレーションがなくても、意味や魅力が伝わる構成にすることが求められます。この他、日本の魅力のほかに、観光スポットのマナーや習慣を紹介するのも効果的です。例えば、寺社へのお参りの方法や飲食店での注文のしかたなどを動画でわかりやすく紹介することは、日本文化への理解度を深め、旅行がますます楽しくなります。
このように、旅行や観光業界では、動画をうまく活用して成功している企業も少なくありません。まだ、この業界で動画を活用していないという場合は、これを機に動画を制作してみてはいかがでしょうか。その場合は機材も経験も豊富な制作会社への相談をお勧めします。きっと、クライアントの立場に立って、魅力的かつ効果的な観光・旅行動画を制作してくれるでしょう。ぜひ、一度、プロへの相談をご検討ください。
テキスト:ナインフィールド
ディレクター 有明 雄介