「実写」か「アニメーション」か

「実写」か「アニメーション」か
2021年11月22日 ninefield

 プロモーションやマーケティングに動画を活用したいと考えたとき、その表現を「実写」にするか、「アニメーション」にするかで、迷う人は多いと思います。それぞれに長所と短所があり、何を表現するかによって、どちらを使うか判断が分かれます。場合によっては実写とアニメの混合といったケースも出てくるでしょう。今回は実写とアニメーション、それぞれのメリット・デメリットを紹介しながら、どのような場面で使ったら効果的か探っていきます。



 

 



実写のメリット・デメリット

実写は「実際に存在するもの」にスポットを当てた表現方法です。「被写体は実在している」という前提で、ドラマ形式やドキュメンタリー形式でストーリーが進んでいくパターンが主流です。
 
 俳優演じる登場人物が、感情を持って行動したり話したりする方が、架空のキャラクターに比べて、見る人の共感を得やすいといえます。また、実在するものを撮影するため、製品やサービスのビジュアルや雰囲気が、そのまま視聴者に伝わります。当然、実写の制作には、出演者や撮影に関わる機材、スタッフ、場所の確保といった「イニシャルコスト」が必要になってきますが、いったんキャストや撮影場所が決まってしまえば、費用や完成までの所要時間が予測しやすいといえます。実在するモノや人を撮影するので、できあがりも比較的イメージしやすいでしょう。

 デメリットとしては、俳優や場面の印象が強い場合、視聴者がそのイメージに引っ張られる懸念があることです。商品のイメージとうまく重なって宣伝効果を上げることもありますが、逆にイメージが固定化し、「自分には関係ない」「共感できない」というように感じさせてしまう恐れもあります。

 撮影や技術面では、修正に手間取る点が挙げられます。修正のための再撮影となると、キャストやスタジオのスケジュール調整からやり直しになってしまいます。また、屋外撮影では天候も考慮しなければならず、コストが嵩みます。このように、変更が大きいほど、負担も増えます。

 

実写が向いているジャンル

実写向きのジャンルといえば、見せることで「直接良さが伝わる」商品やサービスが挙げられます。一般的に実写は、実物を見てどのようなものかわかる製品や、店舗型のサービスの広告に向いています。商品のデザインや機能のすばらしさ、美しさを見せることでストレートにアピールできる商材は、実写向きといえます。

 旅行プランや観光情報の紹介といった題材も実写の方が効果的です。旅先の風景や観光施設、さらには料理などの映像を見せることで、現地の雰囲気やスケール感、空気感などが視聴者に伝わります。

 ターゲット層が明確な場合も、実写の方が共感されやすいでしょう。訴求したい客層に近い俳優を起用すれば、視聴者は感情移入しやすくなります。特定の商品やサービスを使うことで、登場人物の暮らしや人生が改善したり、抱えていた課題が解決したりするストーリーは、類似の課題を抱えている人への訴求力が期待できます。登場人物に共感を持たせることは、商品やサービスはもちろん、それらを提供する企業への親近感や理解も深めていきます。

 先述のような特徴を踏まえ、企業のブランディングや採用を目的としたPR動画にも、実写を使うケースが多くなっています。顧客の生の声を紹介したり、実際の社員が登場したりする動画の方が、架空のキャラクターが紹介するよりも、実感や信頼性の面で段違いに好評価です。こうした理由から、社内外の研修で利用する動画なども、実写の方が向いています。

 

アニメーションのメリット・デメリット

アニメーションのメリットは、何といっても「実際にはないものの表現」が可能なことです。今ではすっかりおなじみの用語ですが、もともと「アニメーション」は、絵や立体物をコマ撮りし、連続して映すことで絵が動いているように見せる手法の総称です。かつては手で一枚一枚原画を描いていましたが、現在はパソコンで制作するスタイルが主流です。架空のキャラクターを使って表現することが多く、空を飛ぶ、壁を歩く、動物が話すなど、現実ではありえない表現もアニメーションなら簡単です。

 抽象的なことを説明しやすいという点も、アニメーションの大きな優位性でしょう。感情を表現するためにキャラクターの表情を思いきりデフォルメして強調することもできますし、概念やロジックなどをわかりやすく視聴者に伝えることも可能です。また、実写では見せることのできない機械などの内部構造をクローズアップして説明したり、IR情報や統計、さらには時間軸に沿ったデータの推移などをグラフィック化したりする場合にも、アニメーションは効果大です。

 アニメーションの最大の武器は、変更に強いことです。実写の場合、撮り直しだと、煩雑な手続きや作業を要しますが、アニメーションだと、デザインや動き、背景の変更も、実写とは比べものにならないほど、容易に行えます。ただし、何もない「無の状態」からデザインやキャラクターを描き出していくため、イメージのすり合わせは生命線です。後になってイメージのズレが生じないように、クライアントやスタッフ用にサンプルを作成しては、確認を繰り返すといった細かい進行チェックが必須です。また、アニメーションの費用は、基シーンの数や動画の長さ(尺)などによって決まりますが、凝った映像や複雑な動きが多い場合は、コストも膨らみます。

 

アニメーションが向いているジャンル

登場人物や場面次第で、ターゲットが絞られてしまう実写と違い、アニメーションでは特定のイメージに引っ張られないように表現することが可能です。このため、幅広い視聴者を対象とした商材の宣伝や、ターゲット層をあまり限定しない告知に向いています。

 実写では映せない、形のない商材の紹介も、アニメーションの得意分野です。製品の仕組みやサービスの解説をはじめ、AIを使ったサービスやソーシャルゲームなどのPRも、アニメーションならば、表現の工夫次第で特徴や長所をいくらでも訴求することができます。

 さらに、日本語以外で展開の予定があったり、複数の媒体での配信を想定しているために、動画の長さ(尺)のパターンをいくつか用意しておきたかったりといった場合にも、アニメーション制作の方が、トータルのコストを抑えられます。

 

長所を掛け合わせて、最適な動画に仕上げる

 ここまで、実写とアニメーションのメリット・デメリットを見てきましたが、お互いの長所を掛け合わせることで、インパクトのある動画制作が可能になります。例えば、キーになるストーリー部分を実写で表現し、システムや機能、データの紹介はアニメーションで伝えるといった構成にすれば、わかりやすく、かつ説得力のある動画になるでしょう。どんな商品を宣伝したいのか、どんなターゲットに向けた動画なのか、動画を通してどんなことを視聴者に伝えたいのかといった目的や状況に合わせて、手法を選択することが大切です。

 映像制作会社はこうした経験を豊富に持っています。もし、ビジネスやマーケティングに動画を活用する際、実写とアニメーション、どちらを選択すればよいか迷ったら、ぜひ、一度、相談してみることをお勧めします。きっと、企画立案の段階からサポートが期待できるでしょう。

 

テキスト:ナインフィールド
プロデューサー 松野 一人