モノやサービスが均質化してきた現在、「生産や誕生の背景を知ってから商品が好きになり、そのブランドの商品を買った」という経験がある人は意外に多いのではないでしょうか? そこに現れたのが、コンセプトムービー。製品開発の陰に隠された企業の持つ想いやコンセプトを伝え、差別化を図るにはうってつけの動画です。言葉や文字では伝えにくい概念を視覚化することで、ユーザーに共感を与え、購買行動に結び付けるのがコンセプトムービーの究極の目的です。そして、動画を活用した企業プロモーションやマーケティングの手法として、比較的新しい概念であるコンセプトムービーの制作に乗り出す企業が増えています。今回はコンセプトムービーの魅力や制作上の留意点などを探っていきます。
コンセプトムービーの魅力と目的
先述の通り、コンセプトムービーは、企業理念やビジョン、商品やサービスに込められた想いといった抽象的な概念、いわゆる「コンセプト」をユーザーへ伝える動画です。言葉や文字と違って、動画は視覚や聴覚に訴えるので、抽象的な想いを表現しやすく、インタビューやドラマ形式の活用など、自由な表現が可能です。そのため、共感の得やすい実写が多用されます。
商品やサービスの価値が、高品質な競合の登場で平準化されてしまうことを「モノ・コトのコモディティ化」と言いますが、これが進む現代では、商品やサービスそのもので差別化を図ることが難しく、他社との違いを明確に示さないと、ユーザーから選ばれる存在になりません。この点、自社ならではのコンセプトや想いを表現できるコンセプトムービーは、他社との差別化を図るのに最適です。
このコンセプトムービーと似たような動画に「ブランディング動画」がありますが、ブランディング動画は、あくまで企業のブランド化を育むことに特化し、基本的に動画内で直接、商品やサービスをアピールしたり、視聴者に具体的なアクションを促したりすることはありません。これに比べて、コンセプトムービーは視聴者にアクションを促す「プロモーション展開」を図り、最終的には、商品やサービスの購買意欲へと結びつけるという点で大きな違いがあります。
コンセプトムービーの活躍例
では、コンセプトムービーはどんな場面で起用すれば、効果的でしょうか。代表的な例として商品プロモや採用動画などが挙げられます。
まず、商品プロモだと2分から3分と尺の短い動画が多いので、商談の場で顧客に直接見てもらうことができます。企業理念や想いといった抽象的な概念を「言葉」だけで一方的にアピールしても、顧客の心にはなかなか響きません。例えば「わたしたちは、仕事を通じて社会に貢献します」という企業理念があったとします。この場合、意味は伝わりますが、具体的にどうしたいのか?何をしているのか?という疑問が湧きます。この疑問を解決するのが、コンセプトムービーです。いきいきと働く社員、仕事のようす、楽しそうに自社のサービスを利用する客…。そんな動画を制作すれば、言葉よりも、はるかに具体的に想いを伝えられます。
さらに、現在ではまだ、存在していないものを自由に産み出せるのも動画の魅力です。未来予想図や近未来の暮らしなど、言葉ではなかなか伝わらない将来も、動画ならばストレートに視覚へ訴えることができます。もちろん、事業にかける想いや、その商品・サービスを開発するに至った経緯、さらには開発者の声なども言葉よりはるかに訴求できるでしょう。共感しやすくなるので、顧客が企業や商品をもっと知りたいと思うようになり、結果的として、自社のファンやリピーターが増えます。
採用を予定している学生たちに自社が重視していることを理解してもらう場面でも、コンセプトムービーが大活躍します。採用活動では自社のビジョンや理念に学生が共感しているかどうかが重要なポイントですが、残念ながら言葉だけではほとんど伝わりません。ビジョンや理念に共感した社員の採用を実現し、事業成長に結びつけていくには、コンセプトムービーの活用が不可欠になってきます。企業の存在意義はもちろん、自社の商品やサービスの提供を通じて、社会に対し、自社が果たしていく役割を表現していくので、オリジナリティの高い仕上がりが期待できます。まさに、人材採用にはもってこいといえるでしょう。
サ制作上の留意点
このように、短い尺で高度なメッセージ性を表現できるのが、コンセプトムービーの最大の魅力です。さらに、一度制作しておけば、多目的な使用が可能という点もメリットの一つで、高い「費用対効果」が期待できます。
では、実際にどういった点に注意して、動画制作を進めていけばよいのでしょうか。まず、大切なのは、目的やターゲット、それにふさわしいメッセージをしっかり決めておくことです。つまりターゲットさえ決まってしまえば、共感されやすいストーリーやナレーションのトーンといった方向性も定まります。
視聴者に対し、自社の長所を訴求するわけですから、当然、自社視点での主張は強くなりますが、度が過ぎると、独りよがりになってしまいます。動画制作の効果が得られないばかりか、最悪、嫌悪感を抱かれてしまう恐れもあります。作ったことを後悔することにもなりかねません。一方で、具体的な訴求点が見えない「何となく」の動画では、ユーザーにアクションを起こせといっても難しいでしょう。同業他社との差別化は、ますます遠のくばかりです。
サプロへの依頼も選択肢
クオリティが重要になってくるコンセプトムービーは、高度な撮影技術と綿密なストーリー構築が不可欠になります。これは未経験者が一朝一夕に作れるものではありません。自社で機材を揃えたり、専従のスタッフを採用したりするよりは、経験豊富で機材を常備しているプロへ頼んだ方がコスト面、リスク回避双方から見て賢明な選択といえます。この時に大切になってくるのが、「企業のコンセプトムービー」である以上、プロモーションという「ビジネス目的」に沿った動画を制作する必要があるという点です。言い換えれば、単なるエンターテインメントの動画を制作するのではないということ。そのためにはビジネス動画の制作経験や実績に定評がある業者を選ぶ必要があります。
プロへ依頼すると決めたら、まずは、ターゲットと目的を明確にしましょう。ペルソナいわゆる顧客モデルを設定してターゲット層を絞り込みます。さらに動画を公開することで、何を達成したいのかしっかりと検証しておきましょう。経験豊富なプロならば、絶妙にバランスを調整し、印象的でなおかつ共感性の高い動画を作ってくれるはずです。
動画マーケティング市場の拡大に伴って、コンセプトムービーは、自社の企業理念やビジョン、商品に込めた想いなどを直感的に顧客へ訴求できるという強みを活かし、今後、企業動画への需要が、さらに高まっていくと予想されます。その際にプロがどんなサポートを提供できるか。依頼主と請け負うプロとの意思の疎通が、作品の成否、ひいては事業拡大計画を左右する重要な要素になることは論を俟ちません。コンセプトムービーの導入を検討中の企業は、是非、プロからアドバイスだけでも受けてみては如何でしょうか?
テキスト:ナインフィールド
ディレクター 林 要