業界内の企業が一堂に会する展示会。新製品発表の場であることはもちろん、巨大な商談の場とも言えます。人がひしめく展示会場でいかに人の目を引き、関心を集めるか、そして商談機会を増やすかは展示会の成功を左右するといっていいでしょう。必然的に効率的なPRが求められますが、来場者へ訴えかける方法の一つとして注目を集めているのが動画です。ブースの前でインパクトのある動画を流せば、来場者の興味を喚起し、商品やサービスの説明を聞いてもらえる可能性も高まります。リアルな展示会で使ったコンテンツをもとに動画制作を行なえば、Webを通じてオンライン展示会としても活用できるでしょう。
動画で注目させ、有意義な商談機会を作り出すことは、新規顧客を獲得するために必須なマーケティング施策といえます。今回は、展示会における動画の活用方法について探っていきます。
動画導入のメリット
展示会へ出展する場合、人の目を引きやすい動画を活用することで、自社が展示するブースへの集客をはじめ、商品やサービス紹介を短時間で行なえます。訴求力のある映像で注目を集め、ブースへの集客を拡大できますし、紙などの媒体に比べ、商品やサービスを魅力的に伝えることもお手のモノです。さらに、移動が困難な商材やソフトウェアなど、形の無い商材を紹介できることも見逃せません。
中でも劇的な効果が期待できるメリットは3つあります。まずは費用の節減です。通常、展示会ですと、ブースの装飾やパンフレットの用意、さらにはコンパニオンといった当日の人件費が必要になってきますが、動画に置き換えれば、これらの費用は大幅に節減できます。
時間と場所を選ばないことも導入にあたっての好材料です。基本、インターネット環境とパソコンなどがあれば、いつでもどこでも出展が可能になります。「いつでも」できますから、展示会開催前からの集客も可能です。動画は、短時間で多くの情報を伝えることができるので、予告に向いており、メールやSNSなどとの連動で、動画コンテンツを告知に使えば、クリック率の向上も期待できます。
参加者の細かいデータの収集が可能なことも、従来の展示会には無いメリットです。オンライン展示会は、参加の申し込みから来場や退場、動画の視聴から商談といった全ての行動がオンライン上で完結します。従って、参加者の細かい興味や関心まで知ることができ、今後のマーケティング活動に役立てることができます。ただ、対面での商談は出来ないので、オンライン上でも詳細が分かるようなコンテンツを用意する必要がありますが、時代が加速度的にオンラインに傾いている昨今、オンライン展示会やハイブリッド展示会はもちろん、実際の展示会でも動画の需要は増すでしょう。
実際の展示会での動画活用法
展示会では、ブースの内外や商談席にモニターを設置できますが、ただ動画を流しただけでは効果は充分に発揮できません。実際に展示会ではどのような動画が活用されているのでしょうか。
一般的なコンテンツとして、まず挙がるのが「会社紹介」です。取り扱っている製品ならびにサービス内容の概要や、実際に働くスタッフの姿、さらには将来的な事業展望などを盛り込み、会社そのものを紹介します。設立から日が浅かったり、新規参入組だったりした場合、まず多くの人の認知が重要になってきますが、展示会で、会社紹介の動画を流せば、認知度アップにつながり、効率的なPRが期待できます。もちろん、編集を加えることで、会社紹介動画は自社のWebサイトや求人サイトにも流用が可能になり、展示会だけでなく、採用業務などにも一役買うでしょう。まさに一石二鳥といえます。
また、自社の製品やサービスが、ソフトウェアなど無形の製品だったり、大きなマシンのように、展示会場へ持ち込めなかったりする場合でも、動画ならば、実際に動いているところを事前に撮影し、展示会の当日に流せば、来場者への訴求は充分、見込めます。
さらに、制作した動画は、PRだけでなく、営業や商談のツールとしても活用できます。製品の基本的な機能や導入方法、使い方などを見てもらった上で商談に入れば、スムーズですし、商品説明にかける時間も短縮できます。これは展示会当日だけでなく、パソコンやスマホなどを持ち込んで、後日展開するビジネスにも応用できます。
この他にも、あえて情報の一部を隠す「ティーザー動画」をブースの外で使い、興味や関心を持った来場者を中まで誘導するといった応用力の高い使い方も可能になります。
効果の高い動画の作り方を考える
ここまで、展示会に動画を導入するメリットを見てきましたが、実際に動画を制作する上で、どんなことに注意をすればいいのでしょうか。
まず、大切なのは、来場者の目線を考えることです。「東京ビッグサイト」など巨大なホールを持つ展示場では、企業のブースが数多く立ち並んでいて、来場者は「できるだけ多くのブースを効率的に見て回りたい」「必要な情報だけを得たい」と考えます。そのため、情報の取捨選択のテンポが早く、来場者が期待していない情報は、すぐに切り捨てられてしまいます。加えて、他社とのPR競争にも打ち克たなければなりません。
つまり、展示会用の動画では「分かりやすさ」と「インパクト」が重要になってきます。例えば、社長など一人の出演者がカメラに向かって延々と話しているような動画はNGです。ウェブ上での公開ならいざ知らず、来場者の出入りが激しい展示会の会場では間違いなく切り捨てられてしまいます。この課題をクリアするには、数秒という短い時間で、ニーズを持つ来場者を引きつける工夫が必須です。「伝えようとする内容」は本当に来場者が求めている情報なのかを考えた上で、情報を厳選し、内容を絞り込んで、短くシンプルにまとめることが「必要十分条件」です。
動画が得意なことを把握し、それを展示会という場でどのように生かすことができるかも考える必要があります。先述のように「ホール内に持ち込めない大きなもの」や「製品テストの様子」などは、映像の専売特許ですし、紙媒体に比べれば、表現方法も多彩で、興味や関心を引きつけるのは比ではありません。さらに、リピート再生で流しっぱなしにできることも優位性の一つです。こうした点を踏まえて、テキストや静止画で紹介していた部分を動画に置き換えれば、キャッチーなコンテンツを流し続けて、来場者を呼び込むという動画ならではのメリットを最大限に発揮できるでしょう。
もう一つ、意外に見逃しがちなのが「音」のケアです。会場が広大なホールのため、残響音で音が非常に聞き取り辛くなります。これをフォローするには、動画にスーパーやテロップを挿入し、遠くからでも来場者が認識しやすくすることが必須です。
ノウハウをプロへ相談しよう
ここまで、展示会用動画あるいはオンライン展示会のメリットと留意点を見てきましたが、これがなかなか一般人には難しいものです。撮影したのはいいけれど、実際にどう編集したら、来場者の心へ響くかはそう簡単にノウハウとして会得できないでしょう。そこは引き出しの豊富なプロへ相談してみては如何でしょうか。一般企業が高価な機材を揃えるリスクも含めて、プロのサポートを得た方が、ビジネスのヒントを探しに来ている来場者へは、的確にアピールできるような気がします。
テキスト:ナインフィールド
ディレクター 林 要