動画マニュアルが人気

動画マニュアルが人気
2021年7月19日 ninefield

従来、紙で作っていたマニュアルを積極的に「動画」へ切り替える企業が増えています。世情も手伝って、職場での情報共有手段として欠かせなくなり、「もう紙には戻せない」という声も聞かれます。撮影や編集といった「紙制作」にはない作業やコストはあるものの、動画導入で移動時間や研修時間が減り、人件費や交通費の削減につながったという声は多いです。加えて、閲覧回数が把握でき、業務フローがどこで停滞しているかが一目瞭然になるなど、意外なメリットも見え始めました。今回は人気上昇中の「動画マニュアル」をとりあげ、そのメリット・デメリットはもちろん、制作の際の留意点についても探ってみます。



 

 



進むマニュアルの「動画化」

製品のマニュアル=取扱説明書をはじめ、業務プロセスの説明マニュアルやセールスマニュアル、研修マニュアルなど様々なマニュアルが動画で制作されています。分かりやすくそして見やすい「動画マニュアル」は、顧客の満足度向上や従業員の理解度向上につながることは論を俟たないでしょう。

ある中堅の美容チェーンでは、休職美容師が復職する際に、動画マニュアルを活用しています。店での仕事の進め方などが主なテーマで、動画はテーマ1本あたり数分と短めです。このため、空き時間や家事の合間に、スマホやパソコンで聞き流すことができ、時間の有効活用にもつながっています。このチェーンでは店側からも動画を受け付け、スタッフの実技を本部の講師が講評する研修にも取り組み始めました。今では研修だけでなく、事務連絡のやりとりも動画化するなど、積極的な活用が目立ちます。

社内の情報共有手段として動画配信システムを活用するケースも出始めています。全国展開している中堅のファストフードチェーンでは、店舗運営のマニュアルを紙から動画へ切り替えました。従業員が新商品の売り方を練習する動画を共有し、本部スタッフや同僚がコメントをつけあいます。動画配信は、販売促進策にも及び、地区担当者が各店を訪ねる必要がなくなりました。このように動画マニュアルをうまく活用し、効率の良い情報共有体制を構築している企業は増加の一途です。

 

動画マニュアル作成のメリット

動画マニュアルのメリットといえば、真っ先に「視覚と聴覚」で理解しやすいことが挙げられます。音声や動きのある動画で学ぶほうが理解しやすく、効率的にスキルや知識を習得できます。
動作の確認や繰り返し視聴ができることも大きなメリットです。飲食店ならば、食材の調理方法やお客様への接遇など、実際の動作を見ることで理解度が増します。製品の操作手順であれば、細かな動きを確認することができるので、不明点が解消します。動画の場合、会場での研修や説明会と違って、不明箇所に戻って視聴をしたり、後日に再度視聴したりと、
自分の好きなタイミングで繰り返し、確認ができるので、理解が深まり、習熟度も増します。

さらに教育コストと時間を節約できることもポイントです。動画マニュアルを活用すれば、研修会場や交通費、紙にした場合の印刷費、講師の人件費などを削減できますし、
一度作ってしまえば、更新の必要が無い限り、繰り返し活用できるので、受講者が増えてもコストは増えません。

紙媒体にない利点は他にもあります。動画マニュアルは閲覧回数の多さが把握できるので、業務フローのどこで停滞を起こしているかが見えてくる利点があります。つまり閲覧回数の多い動画は、「業務内容がわからない」ために見られている可能性が高いので、ピンポイントで対処できる根拠になります。こうしたコミュニケーションの広がりに、機密保持のため、カメラ付きの端末を持ち込めない職場でも、動画の利点を重視し、最近は条件を緩和するところが出始めています。

 

動画マニュアル作成のデメリット

反対にデメリットの代表格といえるのが、「制作コストと時間」です。例えば初めて動画マニュアルを制作する場合、ある程度のコストと時間は覚悟しておかなければいけません。専門の制作業者に委託した場合、コストはその分、多くかかります。かといって、社内制作でコストを抑えようとすれば、動画の撮影や編集などに多くの時間を割く必要があります。機材が無い場合は、購入も考えなければならず、こちらもコストは必要です。

また、紙のマニュアルでもいえることですが、定期的な情報更新が必要です。動画マニュアルは完成したら永遠に使えるというわけではありません。「法律の改正」「社内規則や手順変更」「製品の機能更新」など、定期的に変更箇所を確認し、状況に応じてマニュアルを更新する必要があります。

再生環境の確認も必要です。DVDで配布する場合などは別にして、動画マニュアルを視聴するには、スマートフォンやPCなどのデバイスと、インターネット環境が必須です。視聴用のデバイスを企業が用意するのか、個人のデバイスを利用するのかといった事前の取り決めはもちろん、セキュリティのルールも設ける必要があります。

 

動画マニュアルを作る上での留意点

では、動画マニュアルを制作する上で、どんな点に留意したらよいでしょうか。
まず大切なのは、動画の目的とターゲットの明確化です。
従業員への研修が目的であれば、どのような従業員を対象としていて、動画視聴を通じて従業員にどのような行動をして欲しいのか、といった点をよく整理しておく必要があります。

ターゲットが決まったら、構成づくりに移ります。論点から結論までの流れを表にしたおおまかな骨組みを、テーマごとに短くコンパクトに作成します。この時、一つのテーマが長いと、訴求効果が落ちるので、時間を長くしすぎないこともポイントといえます。
構成を基に、練った台本を作っておくと、全体の流れが確認できるため、撮影後の撮り直しといったリスクが回避できます。台本を元に、効率の良い撮影のスケジュールや段取りを計画しておくことで、ストレスの無い本番を迎えられるでしょう。撮影機材や撮影場所を確保したら、いよいよ撮影スタートです。この時に様々なアングルで撮影して素材を増やしておくと、編集時の選択肢が広がり、オペレートが楽になります。

撮影が終わったら、編集とナレーションに取り掛かります。字幕やBGM・効果音を入れたり、不要なシーンのカット、さらには素材を挿入したりして、見やすい動画に仕上げます。視聴者に特に訴求したい重要なポイントは字幕も入れましょう。マニュアルとして理解しやすい動画にするためには、アニメーションや図解など、表現方法を工夫する必要があります。ですから、台本作成の際に「この部分は図解にする」などと決めておき、素材を用意しておきましょう。また、ナレーターには、動画の目的や台本、注意点などを事前に共有しておき、相互理解を深めておくと、収録が滞るリスクもグッと減らせます。
 
  動画はYouTube、TikTokといった投稿サイトに慣れ親しむ若い世代ほど、受け入れやすくなっています。緊急対応はもちろん、社内の情報共有手段としての実用性をさらに高めていくには、ミドル以上の世代が積極的に関われるかがカギを握りそうです。一度、制作会社へトータルのシステム構築を相談してみては如何でしょうか。

 

テキスト:ナインフィールド
プロデューサー 松野 一人