いまや、あらゆる場面や分野に広がりを見せている「デジタルサイネージ」。最近は、ホテルのコンシェルジェをはじめとした案内や相談のためのツール、駅や空港といった公共交通機関での案内板はもちろん、株価情報を金融機関の店内で表示したり、 スーパーでは、食品の価格を画面で知らせたりするなど、その活躍を見ない日はありません。さらには、学校や病院での情報共有ツールや、企業内の連絡ツールとしても広がっていくことが期待されています。 発展した使い方としては、街の空間アートとして、景観とマッチさせたり、公共の空間で緊急情報を流したりするなど、公的な利用も進んでいます。これまでの紙媒体とは違って、動画を使えるため、広告の訴求効果は大幅に向上します。今回はデジタルサイネージに動画がもたらす可能性について、探っていきます。
デジタルサイネージをとりまく環境
新たな市場を探し求めるスポンサーが、テレビCMから徐々に他の広告媒体へシフトし始めている中、デジタルサイネージは「リアルな消費の現場に近いメディア」として、注目を集めています。
デジタルサイネージは、場所や時間、それに人を問いません。換言すれば「いつでも、どこでも、だれにでも」 情報を伝えることができ、加えて「いまだけ、ここだけ、あなただけ」に伝えるメディアともいえます。あるシンクタンクの調査によりますと、デジタルサイネージの市場規模は1500億円に上るそうです。換言すれば、広告の訴求効果としては最も効率的なメディアといえ、明確な目的や効果を伴って、情報を送り届けることができます。
デジタルサイネージのメリット・デメリット
デジタルサイネージの場合、テレビCMのように、不特定多数に同じ広告を流すのではなく、設置場所のエリア性を考慮したターゲットを設定し、設定したターゲットの視聴者に、焦点を絞ったメッセージを発信できます。ネットワーク対応機の場合は、通信ネットワークを使ったリアルタイムでの操作や情報配信が可能ですし、スタンドアローン機でも、多くの機種でUSBメモリやSDカードといった記録媒体を使って、表示内容を随時、変更できます。こうした先進的かつ柔軟な運用で、最新情報が提供でき、見る人への訴求力が高まりますし、設置エリアに対応したキャンペーンをリアルタイムに配信することもお手のモノです。ポスターやロール・スクリーンのような印刷物だと取替えの手間がかかりますが、デジタルサイネージでは皆無で、特に通勤電車などでの貼り替え作業は、姿を消しました。
さらに今までの紙媒体の広告やポスターと違って、デジタルサイネージは動画を使うことができ、その相性は抜群です。1台のディスプレイで複数のコンテンツを切り替えられることがセールスポイントで、現場の特徴にあった内容を配信できるほか、時間によってもコンテンツを変えられます。先述のように、1台の表示機で、広告表示枠を秒単位で切り売りできるため、営業面でも、従来メディアとの優位性の高さを訴求できるようになりました。
さらに、ビデオ・ウォールやイルミネーションとしてもの使えるので、紙のポスターや、同じ静止画を切り替えるだけの看板広告、さらには同じ動画を繰り返し再生するだけのビデオ・ディスプレイと比べ、エンタテインメント性も格段に向上しています。
もちろん、大型のディスプレイを設置するほど、レンタルや購入費用といったコストがかさんでしまいますし、メーカーや機器のスペック確認も必要になりますが、長期的な目線でコストを比べれば、得になる場合もあります。また、一般的に多くの人が目にする場所に設置するため、環境によっては水が掛かってしまったり、体がぶつかって破損してしまったりする可能性もありますが、これも、安全性や耐久性を考慮して設置場所を決定することで克服可能です。
デジタルサイネージのさらなる進化
デジタルサイネージには、大きく分けて、単一方向的な発信方法の「ブロードキャスト型」と、ユーザーとのコミュニケーションが可能な「インタラクティブ型」の2種類がありますが、特に近年の「インタラクティブ型」の進化は目覚ましく、カメラやセンサーによって取得された情報を表示する他、取得情報をAI解析することで、その時その瞬間に最適化されたコンテンツを動的に表示することも可能です。
さらに、従来の機能に加え、HDカメラの映像をリアルタイムでAR処理し、顔認識技術を使って、性別や年齢を瞬時に判断、見る人に合わせた映像を生成するサイネージも増えています。この技術ならば、視聴者に最適な広告コンテンツを表示できるので、まさに広告業界の革命といっていいでしょう。加えて、デジタルサイネージと利用者のスマートフォンをつなぎ、利用者にあった最適なコンテンツの表示を、プライバシーにも配慮した形で行うシステムも現実化してきました。こうした技術革新が屋台骨になって、デジタルサイネージの分野は、これからも多様な広がりを見せていくと予想されます。
デジタルサイネージの今後と動画コンテンツの将来性
デジタルサイネージには外国人観光客の誘致を成功させる可能性を持っています。東京オリンピック・パラリンピックの開催など、今後の展開として、多言語対応の店員を雇ったり育てたりするよりは、マルチランゲージのサイネージシステムを導入した方が、コスト削減につながると判断する経営者は増えるはずです。多言語対応が一般的になれば、デジタルサイネージの市場はさらなる急拡大の様相を見せるでしょう。そして、先述の通り、動画との相性が抜群なので、多言語バージョンのコンテンツを用意すれば、より立体的で訴求力に富んだ広告が期待できます。動画コンテンツのデジタルサイネージ増加はまさに好環境を整えてきていることは論を俟ちません。
ただ、デジタルサイネージの映像は、訴求相手に対する接触時間が短いので、相手にじっくり映像を見てもらえるとは限りません。むしろ、相手が歩いているときの視界に入ってくる程度のケースが大半です。画面のサイズや設置する場所にもよりますが、概ね10秒以内で通行人の心をつかむ必要があります。映像やスーパーのクオリティ、バランス感覚を調整するのは難しく、動画制作に慣れていなければ、良質のコンテンツを生み出すには、どうしても、時間と労力がかかってしまいます。場合によっては他の業務にも影響を及ぼしかねません。
この際、デジタルサイネージで動画広告を企画するならば、その道の専門家、それも制作プロダクションへ相談を持ち掛けてみては如何でしょうか?プロであれば、テレビCMで培った「ノウハウの蓄積」で引き出しが豊富です。きっと、様々なアイデアで依頼者の思いに応えてくれるでしょう。そして、完成した動画広告が、商品やサービスはもちろん、会社内容についても、より効果的に訴求できれば、広告発信だけで終わるのではなく、そこをきっかけとしたファン作りも実現するかも知れません。さまざまな可能性を含んだデジタルサイネージでの動画広告。広告効果が最大限に活かされるためにも、ぜひ、制作プロダクションへのご相談をお勧めします。
テキスト:ナインフィールド
プロデューサー 笹木 尚人